「帽子をかぶるとハゲる」「ハゲの男性は精力絶倫」などなど、ハゲ(薄毛)にまつわる多くの都市伝説の中で、もっとも信ぴょう性が高いと思われているのが「悩むとハゲる」だ。
確かに、深刻な悩みを抱えると円形脱毛症になる例などが知られているが、本当に毛髪に悪影響を与えるかどうかは、よくわかっていなかった。化粧品メーカーのマンダムの研究チームが、世界で初めてストレスが薄毛の原因になることを突きとめた。
ストレスで毛穴から生える本数が半分以下に
研究をまとめたのは、マンダムと医療法人社団「Xanaduあやこいとうクリニック」院長の伊藤史子医師との共同チーム。2016年10月24日に開かれた日本美容外科学会で発表された。
マンダムの発表資料によると、共同チームのこれまでの研究では、30~40代の薄毛傾向にある男性は、同年代の髪がフサフサしている男性に比べ、頭皮が硬く、毛髪が発育しにくいことが明らかになっている。
そこで今回は、ストレスが頭皮の硬さに与える影響を調べた。人間はストレスを感じると、「コルチゾール」というホルモン(ストレスホルモンの一種)を分泌させ、気持ちを落ち着かせようとする。逆にいうと、コルチゾール濃度の高い人ほどストレスにさらされている、つまり「悩んでいる」ことになる。
30~40代の男性24人を対象に、唾液中のコルチゾール濃度と毛髪の関係を調べると、コルチゾール濃度の高い人ほど後頭部の毛髪の直径が細いことがわかった。たとえば、コルチゾール濃度が約3倍高くなると、毛髪は6割ほどの細さになる。
しかし、唾液中のコルチゾールは1日のうちで変動が大きいので、より確かなストレスの指標を使うことにした。ストレスを感じると数値が上昇する血液中の「血清尿酸値」だ。男性24人の血清尿酸値を調べると、尿酸値が高い人ほど、後頭部の頭皮にある毛穴1つあたりから生える毛髪の本数が少なくなることがわかった。たとえば、尿酸値が5ポイント増えると、毛穴から生える毛髪の本数が2本半から1本へと、かなりの割合で少なくなる。また、尿酸値が高い人ほど頭皮が硬いことも確認した。
つまり、ストレスを感じやすい人は、頭皮が硬くなって毛髪が育ちにくくなるばかりか、毛穴から生える本数も減ってしまうわけだ。研究チームでは「頭皮をやわらかく保つことが大切」として、頭皮の状態をよくする製品の開発に努めるとコメントしている。