タレントのベッキーさんが「不倫騒動」の後、トレードマークだったロングヘアをバッサリとカットした姿を新聞広告で披露した。そのイメチェンぶりは世間を驚かせたが、切った長い髪は「寄付」していたようだ。
病気で髪の毛が抜けた子どもたちのため、寄付を募って医療用ウイッグを作る「ヘアドネーション」という取り組みがある。近年、徐々に知られるようになってきた。
ベッキー「本人の希望」、柴咲コウや水野美紀も
ベッキーさんの長い髪のその後について明かしたのは、カットを担当したという美容師の松浦美穂氏。2016年10月1日、「ご本人のご希望で切った髪の毛はドネーションさせていただきました」とインスタグラムで言及した。
ヘアドネーションを自ら公表した芸能人もいる。柴咲コウさんは15年12月17日、50センチほどあろうかという長い髪の束の写真とともに「髪の毛の寄付をしました #ヘアドネーション」とインスタグラムに投稿。2万件以上の「いいね!」が寄せられた。
15年3月9日には、水野美紀さんも胸の下まである長い髪を切って寄付したことを、カットを担当したアナミダイリュウ氏が自身のブログで伝えていた。水野さんは寄付する髪には自らハサミを入れたといい、アナミ氏はその模様を写真付きで紹介している。
ブログやSNS、口コミで拡大
ヘアドネーションについて、髪の寄付受付からウイッグ製作までを扱うNPO法人「Japan Hair Donation & Charity(JHDAC=ジャーダック)」の渡辺貴一事務局長は、J-CASTヘルスケアの取材に対し、「09年の法人設立以来、寄付の量は右肩上がりで増えています」と明かす。毎日50~100件の髪が郵便で送られてくるという。だが実は、「予算の都合もあって、大々的にPR活動ができているわけではありません」。では、なぜ広がりを見せているのか。
「ひとつは、有名女優の方々が発信しているためだと思います。柴咲コウさんや水野美紀さんが寄付をされた影響はとても大きく、ボランティアにあまり関心がなかった方々の興味も引かれたようです」
確かに、柴咲さんの投稿に対しては「恥ずかしながら知りませんでした。私もいつかヘアドネーションします!」といったユーザーの声が多く寄せられていた。ただ、こうした芸能人の発信の例は多くはない。
「実際に寄付された一般の方々が、ブログやSNS、口コミで広めてくださっている影響もあります。長い髪を切ると、かなり目立って会話になりますよね。そこで『ヘアドネーションしたんだ』と隠さずに胸を張って伝えるのは自然なことで、どんどん拡大しているのだと思います」(渡辺氏)
寄付の方法はそれほど難しくはない。JHDACの活動に協力している「賛同美容室」が全国にあり、そこでカットの際に申し出れば、個々の美容室にもよるが、特に手間もなく寄付できる。都内のある賛同美容室の美容師は、「ロングヘアをカットされるお客様は、ご自身から寄付したいと申し出る方もいれば、美容師から寄付をご提案させていただくこともある」と取材に答えた。
「50センチ以上の髪の寄付は少ない」
寄付にあたり、髪の色は問われず、少し引っ張って切れるほど極端でなければ傷んでいてもよい。ただ、長さはウイッグ製作の都合上、最低31センチなければならない。全体的に寄付の量は増えているものの、ロングヘアのウイッグを求める子どもも多く、それに必要な「50センチ以上の髪の寄付は慢性的に少ない」(渡辺氏)という。
また、ヘアドネーションの認知度自体はまだ低い、と渡辺氏は言う。
「現在、テレビをはじめ、新聞やラジオ、雑誌、ウェブニュースなどなど、多くのメディアからの取材依頼が殺到しております。そのこと自体が『まだまだ国内では珍しい活動である』ということの証拠だと感じています」
JHDAC のウェブサイトによると、09年の発足以来製作・提供したウイッグの数は16年10月時点で115人分だという。一方、ウイッグを待つ人の数は98人いる。すべてのウイッグがオーダーメードで、製作の要望を受けてから手元に届けられるまでは最長で2年ほどかかる。予算の都合で「これ以上スピードを上げるのは、現状難しい」とし、「この待機期間が、小児がん患者からの申請が少ない一因になっていると予測しています」と渡辺氏は悩みを明かした。賛同美容室も16年10月時点で全国に1500店舗ほどあるが、美容室自体は20万店以上ある。ヘアドネーションの活動はまだまだ道半ばといえよう。