運動部の掛け声や、吹奏楽部の楽器の音がうるさいと、近隣住民が学校や自治体にクレームを寄せることがある。苦情を受けて「部活の声出しが禁止された」「朝練がなくなった」学校も実際にみられるようだ。
子どもたちの学校での声や音をめぐり、掲示板サイトでは、苦情を入れてよいという声もあれば、「諦めろ」との意見もある。自治体によっては、子どもの声も騒音になりえるとして規制している。
「音を出したら子どもに何かするぞ」と脅し
「近所の中学校の部活動がうるさい」と、相談サイト「発言小町」で2015年12月13日に投稿があった。平日・休日問わず毎朝7時から野球部が校庭で朝練をしており、全員で出す「うぇーい」「ばっちこーい」という掛け声で投稿者は「正直本当に正気を失いそう」と困り果てている。回答には「教育委員会に苦情を申し立てるのは、いかがでしょうか」と進言するものから、「学校の近所に住んでいるのだから仕方ない」と我慢を促す意見と分かれた。中には「野球部は無言で練習しろって言うんですか?」と諌める声もあった。
本当に部活の声出しを禁止した学校もあったようだ。読売新聞のウェブ版「YOMIURI ONLINE」に07年10月22日付で掲載された記事によると、愛媛県松山市の中学校は近隣から「野球部の声やボールを打つ音がうるさい」と苦情が寄せられたのを機に、住民と市が話し合いをした結果、野球部は声を出すのをやめて黙って練習するようにしたという。
子育てコミュニティサイト「ママスタジアム」でも、子どもの小学校の近隣から苦情があったため、吹奏楽部とサッカー部の朝練が廃止された、という投稿が13年10月18日にあった。楽器の音や、ボールを蹴る音がうるさく、苦情を入れた本人から「音を出したら子どもに何かするぞみたいな、脅しもあった」という。
東京都教育庁「苦情をいただくことはあります」
東京都では、子どもの声を騒音とみなすかどうかの議論があった。かつては「全ての年齢の人の声や音」が騒音とされ、条例の規制基準の対象だったが、都がウェブサイトで公開している資料によると、2015年4月の改正で「小学校就学前の子どもが出す声や音」については「健やかに成長するという子供の権利」確保のため対象外に。ただ、小学生以上は引き続き規制対象にとどめた。
資料で都は「子供の声であっても、状況によっては騒音となる」としているが、改正前に都民が寄せた意見には「小学生の声や音に対しては寛容であるべき」「見直しの対象を未就学児だけでなく、子供全体(18歳以下)にするべき」と求めるものがあった。逆に「小学校は迷惑施設と考える向きもある」「他者の生活権を一方的に侵害することになり兼ねず容認できない」という意見も出た。
都教育庁教育情報課の担当者は16年10月7日、J-CASTヘルスケアの取材に対し、「野球部のバットの打音や、吹奏楽部の楽器、体育祭をはじめとした行事での音楽や掛け声に対し、近隣住民の方から学校や都に苦情をいただくことはあります」と答えた。苦情は地域ごとに設けられた学校経営支援センターに報告し、個別に学校の判断で対応しているという。