【健康カプセル!ゲンキの時間】(TBS系)2016年5月1日放送
「あなたに必要な歩数は?寿命を延ばすウオーキング法」
中高年の3人に1人が実践しているほど人気の運動「ウオーキング」だが、何も意識せずにただやみくもに歩くだけでは健康につながらないおそれがある。
歩数や歩幅を意識して歩けば、肥満や糖尿病、認知症、がんまで予防できる可能性があることが、「奇跡の研究」で明らかになった。
1日8000歩、「中強度の歩き」がカギ
今、多くの自治体で、歩くことを推奨する取り組みが行われている。番組では、横浜市で実施されている「横浜ウォーキングポイント」が紹介された。
コンビニエンスストアや商店街と連携。協力店舗に設置された読み取り機に歩数計をかざすと歩数に応じたポイントがたまり、抽選で商品券がもらえるという取り組みで、歩数計は40歳以上の市民に無料で配布されている。番組放送時点で16万人が参加しているという。
歩くことに注目が集まっている理由は、東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チームの青栁幸利副部長が行った「奇跡の研究」にあるようだ。
青栁副部長「歩くと健康にいいのは誰でもご存知ですよね。どれだけ歩いたらどんな病気が予防できるのか、明確な基準はなかったんです。それを突き止めた研究です」
調査は青栁副部長の生まれ故郷、群馬県中之条町で実施した。
65歳以上の全住民5000人に、多機能歩数計の活動量計を配布し、24時間どんな生活をしているかのデータを365日、15年にわたって収集、分析した。
その結果、1日8000歩、その中で「中強度の歩き」を20分こなすと、うつ病、脳・心疾患、認知症、動脈硬化、大腸がんや肺がんなど一部のがん、骨粗しょう症、糖尿病、高血圧、脂質異常症と、様々な病気が予防できることがわかったという。
番組で「ゲンキリサーチャー」を務めるお笑いコンビ「X-GUN」の西尾季隆が、「人間って誰しも歩いてるじゃないですか、でも病気になりますよね」と青栁副部長に水を向けると、
青栁副部長「ダラダラ歩いているだけだと、肝心な強度という概念が(損なわれる)。ステップを踏む強さがとても大事だとわかってきたんです」
歩きの強度が低いと代謝が上がらず、心臓や血管の機能が高まらない。一方、高すぎても酸化ストレスにより免疫機能が落ち、疲労がたまったり病気がちになる。
こぶし1個分大股にし、何とか会話ができる程度の早歩きを意識すると、自然に背筋が伸びて腕も振れ、エネルギー消費量も上がる。こんな「中強度の歩き」が、病気予防には好ましいという。
歩きすぎで免疫機能下がる恐れ
長野県駒ヶ根市では、内科や整形外科の病院で、「奇跡の研究」のデータをもとに、1日8000歩、中強度の20分ウオークを患者にすすめている。患者は診察のたびに活動量計を医師に提出し、医師は日頃の歩数や中強度の動きを確認、アドバイスを送る。
実践し続けた結果、血圧が正常値になったり、糖尿病の薬を飲む回数を減らせたりという効果があらわれた。
まえやま内科胃腸科クリニックの前山浩信医師「医師に自分の運動状態を見てもらえるのは、患者さんにとってはすごくいいことだと思いますし、これは本当に運動療法では画期的なものだと思います」
今後10年、20年とデータが蓄積されれば、さらなる病気の予防にもつながる可能性がある。
MCの三宅裕司「8000歩以上だとやりすぎってこともあるんですか?」
青栁副部長「1万2000歩までしかグラフにはないんですが、それ以上歩いても一つとして病気が予防できるというのは見つかっていないんです。むしろ、やればやるほど免疫機能が下がってしまう方も出てくる」
ちなみに認知症は1日5000歩、中強度の歩き7分半。一部のがんは7000歩、中強度15分でも予防できる。いきなり8000歩はきついという人は、徐々に歩数を増やし、中強度の歩き20分を目標にするとよい。
こうすれば日常生活の中で歩数を稼げる
「奇跡の研究」のウオーキング法は実際どれだけ体に好影響を与えるのか。この番組で糖尿病が発覚した西尾と、一般から40歳の主婦・パート、後藤敦子さんが1週間実践した。
実践前、西尾の5日間の平均歩数は、1日当たり3459歩。中強度の歩きは5分で、体重は91.9キロだった。このままだと、うつ病をはじめ全ての病気になる可能性があるという。
歩数を稼ぐため、家から駅まで徒歩15分の距離を自転車で移動していたのを歩きに変えた。常に早歩きするのではなく、無理のない程度で時々意識して早歩きするだけでも、中強度の歩きを増やせる。
自転車は健康にいいイメージがあるが、青栁副部長によると、平らな道を自転車で移動するくらいではそれほど息が上がらず、あまり効果はないそうだ。
駅に着いたら、エスカレーターではなく階段を使う。階段の上り下りは、それだけで中強度の歩きになるという。
仕事場で食事した後は外を散歩する。糖尿病患者は食後1時間以内に血糖値が急激に上がるので、それを防ぐため少しでも歩くと効果的だ。外出できない時は、その場で足踏みをするだけでもよい。足を高く上げると中強度の歩きとなる。
1週間続けた結果、1日の平均歩数は1万525歩、中強度の歩きは21分に増えた。体重は90.3キロと、1.6キロの減量に成功した。
一方の後藤さんは、実践前の5日間の平均歩数は、1日当たり3052歩、中強度の歩きは2分だった。
2歳の娘を抱え、育児で忙しくなかなか歩けないという後藤さん。午前中の洗濯では洗濯物を干す場所を2か所に、掃除では片手に掃除機の本体を持った。ある程度重いものを持って動くと、体に負荷がかかり、中強度の運動になる。
後藤さん「全然違います。重みが加わると汗が出てきます。でもすごく大変っていうわけでもないので、毎日できそう」
徒歩5分のスーパーまで自転車で買い物に行っていたのを、積極的な早歩きに変えた。帰りは両手に買い物袋を持ち、普通の速さで歩いて帰る。荷物を持っているので、これだけで中強度の歩きになるのだ。
1週間後、1日の平均歩数は6678歩、中強度の歩きは9分に改善された上、「疲れがたまりにくく動きやすくなった」「寝付きと目覚めがよくなった」「便秘症が改善された」といううれしい効果もあったという。
西尾「続けていくうちに持久力が上がったり、しんどくなくなってくる」
青栁副部長「これが2か月続けば、間違いなく血糖値が下がると思います」
ひざ痛に悩む人には「ポールウオーキング」
腰痛を抱えていたり、ひざに痛みがあったりすると、たくさん歩くのは難しいだろう。そんな人には、ポールを使ったウオーキングがおすすめだ。
スキーのストックのようなポールを、グリップの上に手を置いてひじの角度が90度になるように持つ。歩幅は普段より半歩広く、ポールはかかとの横につくイメージで歩く。2本のポールで体を支えるため、足腰や膝の負担が軽減される。ポールは百貨店やスポーツ用品店で購入可能だ。
日本ポールウォーキング協会の杉浦伸郎代表理事「通常のウオーキングは下半身しか動かしていないケースが多いけれど、ポールを持つことによって上半身も積極的に動かすので、全身運動になる。運動強度も2~3割アップします」
ポールウオーキングをしている人からは、「血圧が、薬なしでも正常値になった」「膝への負担が軽くなった」「肩甲骨を動かすので肩こりが解消された」との声が上がった。
MCの渡辺満里奈は、番組冒頭で「多分1日1000歩も歩いていない」と話していたが、
「歩くことによってこんなにたくさんの病気が予防できるとは思ってもいなかったので、気を付けて心がけようと思いました」
と、すっかり意識が変わったようだ。