シャキシャキの食感がたまらないレンコン。ちょっと地味だが、開いている穴からのぞくと「将来を見通せる」という縁起をかつぎ、正月などのハレの日に欠かせない野菜だ。
最近は、花粉症、ぜんそくなどのアレルギー疾患の改善や、肥満予防に効果が期待されるなど、多くの健康効果があることがわかってきた。2回に渡って、レンコンの凄さに迫る。
漢方では根から花まで全身役に立つ薬用植物
もともとレンコンは、漢方では根、茎、皮、ハスの葉や花、種まですべてが使われる薬用植物だ。1本のハスから9種類の生薬ができるほど薬効がある。「胃腸虚弱の改善」「痛み止め・毒消し」「血をめぐらせる」「体を冷やす」効果があるとされ、その効能も冷え症、便秘、頭痛、肩こり、神経症、悪寒、貧血、更年期障害、腹痛、食欲不振、寝汗、夜尿症、むくみ、関節痛、めまい......と幅広い。特に美肌とダイエット効果に関しては、世界3大美女の1人で、太りやすい体質に悩んでいたといわれる楊貴妃が、毎日欠かさずハスの葉茶を飲んでいたことは有名だ。
さて現代では、2013年、埼玉医科大学の和合治久教授らのチームが、レンコンに花粉症を抑える効果があるという研究成果を発表した。花粉症患者620人にレンコンの粉末が入ったお茶とみそ汁を3か月間飲ませたところ、81%の患者の症状が改善した。これは、レンコンに含まれる「タンニン」と「ムチン」という成分の相乗効果だという。タンニンは、アレルギー症状を引き起こす「IgE抗体」を抑制する作用があり、ムチンには花粉症の炎症を抑えると同時に鼻の中の粘膜を守る働きがあるからだ。
和合教授は「花粉症の人は、毎日40グラムの輪切りレンコン(やや厚めに切った3枚分)を食べ続けると2週間目あたりから効果が感じられます。ポタージュスープにして飲むのもオススメです」とコメントしている。
肥満のマウスに食べさせると3週間で肝脂肪が6割減
レンコンは、花粉症と同じアレルギー疾患であるぜんそくにも効果があるようだ。また、レンコンのポリフェノール(植物由来成分)に脂肪を燃焼させる効果があることも実験で確かめられた。レンコンの産地・佐賀県工業技術センターが、古くなって捨てられるレンコンの有効利用を図りたいと研究を進めた結果、2009年、脂肪肝のマウスにレンコンを食べさせる実験を行なったところ、3週間で肝臓の脂肪の濃度が62%も減少したと発表した。
レンコンには、野菜の中でも特にポリフェノールが多いといわれるゴボウの4倍以上もポリフェノールがある。楊貴妃がレンコンの葉茶を飲んで美貌を保ち、玄宗皇帝の寵愛を独占した故事には根拠があったわけだ。(後編に続く)