最近、サケやカニ、エビなどに豊富に含まれている赤い色素の「アスタキサンチン」が、老化の原因になる活性酸素を除去する抗酸化作用が非常に高く、がんや認知症の予防が期待できるとして注目を集めている。
そのアスタキサンチンが、脳の海馬の働きを活発にして学習・記憶能力を高めることを、筑波大学の征矢英昭教授らのチームが初めて突きとめ、国際栄養食品学誌「Molecular Nutrition and Food Research」の2015年12月8日号に発表した。
マウス実験で学習・記憶能力が高まった
アスタキサンチンは、強力な抗酸化作用があり、その効力はビタミンEの約1000倍、ベータカロテンの約100倍だ。中でもすごいのは、パワーだけではなく、脳内でも働くことができる数少ない抗酸化物質だという点。脳は最も重要な器官なので、入り口に「血液脳関門」いう関所があり、不用な物質ははじかれる。ビタミンEやベータカロテンなどの抗酸化物質でさえ通れない。
これまでの動物実験では、アスタキサンチンが損傷した脳神経を補修する効果があることは知られていたが、健康な脳で、記憶や学習能力をつかさどる海馬にどんな効果を与えるかはわかっていなかった。
征矢教授らは、異なる濃度のアスタキサンチンを入れたエサを、4週間マウスに与える実験を行った。すると、一番濃いエサを食べたマウスの海馬の神経細胞が増えた。そこで、そのマウスを空間学習と記憶能力を確かめる迷路を使って実験すると、アスタキサンチンを食べていないマウスに比べて、学習・記憶能力が高まることがわかった。また、今回の実験で記憶力を向上させる新たな分子の伝達回路を発見し、その回路にアスタキサンチンがいい影響を与えることがわかった。