サッカーのヘディングが子どもの脳壊す 衝撃はボクサーのパンチ並みにも

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   サッカーの醍醐味であるゴール前の競り合いのヘディングシュートだが、成長期の子どもの脳に障害を与える危険があるとして、2015年11月10日、米国サッカー協会が10歳以下の選手のヘディングを禁止すると発表した。11~13歳の選手にも練習中のヘディング回数に制限を設ける。

   ヘディング禁止令の対象は、米サッカー協会傘下のユース代表チームやアカデミーに所属する選手が対象で、全米で約300万人いるユース人口(18歳以下)のごく一部だ。しかし、協会では傘下の全団体に同様の対応をとるよう呼びかけている。

  • ゴール前の競り合いがサッカーの醍醐味だが
    ゴール前の競り合いがサッカーの醍醐味だが
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これからは風船やシャボン玉で練習だ

   早くも米国のテレビには、「これからは、風船やシャボン玉で練習させるしかない」と嘆く少年サッカーのコーチがいるなど、混乱が広がっているが、背景には、サッカーだけでなく、アメリカンフットボールや野球といったスポーツ選手の脳震盪(のうしんとう)問題がある。2015年4月、全米プロフットボールリーグ(NFL)の元選手約5000人が「アルツハイマーやパーキンソン病など、脳に健康被害が生じた」としてリーグに損害賠償を求めた集団訴訟の和解があり、総額で10億ドル(約1200億円)の賠償金をNFLが元選手側に支払った。

   メジャーリーグでも同年11月、「殺人スライディング」といわれる危険行為の禁止の検討に入った。ラグビーでも、英国のスター選手がタックルによる脳のダメージで引退するケースが相次ぎ、W杯の統括団体ワールドラグビー(WR)の最高医療責任者が2015年9月、「選手を守るのが私の仕事だ。タックルのルールの改正を検討する」というコメントを発表した。米サッカー協会が「ヘディング禁止令」を打ち出したのも、試合中の事故で脳に障害を負った子どもの裁判がきっかけだ。

脳への衝撃は接触プレーのせいとの声も

   もともとヘディングについては、「脳に悪い」という研究が数多く発表されている。2011年11月、米アインシュタイン医学校がアマチュア選手37人を対象に年間の試合中のヘディング回数が脳に与える影響を調べた。脳の断層検査と集中力、記憶力のテストを行い比較した。選手のヘディング回数は少ない人が32回、多い人が5400回にのぼった。その結果、ヘディング回数が年に約1000~1500回に達すると、明らかに脳の画像で脳神経組織に損傷がみられた。1800回以上を超えると記憶力が急激に低下した。

   2014年4月に米ボストン大学が発表したヘディングの衝撃力の研究では、「正しい姿勢がとれない子どもの場合、頭部に40~50Gの力がかかる」という結果が出た。これはアマチュアボクサーのパンチ力に相当する。一方、「ヘディング擁護」の研究もある。2015年8月、米コロラド大学は過去9年間にわたって全米の高校生が試合や練習中に脳震盪を起こしたケースを調査した。すると、原因の大部分は選手同士が激しくぶつかる接触プレーで、ヘディングが原因だったケースは男子で約30%、女子で約25%だった。

カズ「4歳からヘディングしている僕はどうなる?」

   今回の米の「ヘディング禁止令」、各国の反応はどうか。イングランド・サッカー協会の代表は、英紙の取材に「FIFA(国際サッカー連盟)の意向に関係なく、われわれ独自で頭部のケガの問題について専門委員に新ルールの検討を依頼したい」と答え、英国でもヘディング禁止になる可能性を示唆している。一方、日本サッカー協会は、毎日新聞の取材に「現在のところ特に考えていない」とコメントしている。

   J2横浜FCのカズこと三浦知良(48)は、「ハハハ」と苦笑いしながら報道陣にこうコメントした。

「4歳からヘディングしている僕はどうなるんですか? (脳が)揺れているんですか? でも、強い刺激が入るのは確かだから、成長期に少しでもリスクを下げるということでしょう。現実には、試合でコーナーキックが蹴れなくなっちゃうよね。難しいな」
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