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もう少し、西洋と日本の考え方の違いをみていきましょう。
まず、絵画の人物を飾り、色・柄・デザインも多様な「衣服」について。
手ざわりやボリュームの違い、着ることで際立つ立体感を、画家たちは、どう捉えたのでしょうか。
生涯学習センター講師 ●伊藤 淳
もう少し、西洋と日本の考え方の違いをみていきましょう。
まず、絵画の人物を飾り、色・柄・デザインも多様な「衣服」について。
手ざわりやボリュームの違い、着ることで際立つ立体感を、画家たちは、どう捉えたのでしょうか。
ダ・ヴィンチは、白と灰色の色調を見事に使い分けてボリューム感を出しています。いっぽう、師宣の着物は線だけを入れ、模様もパッチワークのように平面的に置いています。日本では絵画も、まるで《行間を読む》ことを前提に表現されるようです。
日本画と西洋画には、空間の描き方に、大きな違いが見られます。
位置を固定して、そこから見えるように描くのか、視点を変えて、実際そこにあるべき形で描くのかにより、構図の作り方が異なります。
『 受胎告知 』 は、空間要素を1点に集める一点透視図法で構成されています。
いっぽう日本の絵巻は、縦書き文字のように右から左に巻きながら動き、視点が固定されません。屋根をあえて描かない「吹き抜け」構図も特徴です。やはり《行間》を読むのが前提のようです。
日本でも西洋でも、庭は人の手を加えて造ります。
どちらも美しさを念頭において造られますが、伝統的な庭を見ると、両者にはそれぞれ異なった主張があるように思えます。
平面幾何学的な庭園は、主にフランスで発達。形が明確で、自然に対する人間の優位性を見せつけるかのようです。対して、日本の庭は不定形。見る人それぞれが、仙境の思いにふける余地があります。
建築様式の違いもありますが、応接間、居間など部屋の内部の作り方には、西洋人と日本人の考え方の違いが顕著に表れています。
伝統的な部屋を比較してみましょう。
板絵・壁画が壁を埋めつくすピッティ宮殿。いっぽう、「無」の空間に一輪の花がアクセントとなる茶室。 この違いは、饒舌な主張の文化と、 《行間》で伝えようとする文化の違いのようでもあります。
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