東京五輪のマラソン・競歩が札幌で開催することが正式発表されたが、同時に「オリンピック・セレブレーション・マラソン」を五輪後の東京で開催する案が飛び出した。開催地変更について「都民に誠意を示す」ためだというが、インターネット上では「何か騙されてる感ある」と懐疑的な声が多数あがった。
IOC(国際オリンピック委員会)のジョン・コーツ調整委員長は2019年11月1日、五輪組織委員会・森喜朗会長との合同会見で、その内容の一端を明かしている。
「具体的な企画はこれからIOCと検討したい」
「セレブレーション・マラソン」は、合同会見に先立って行われたIOC・組織委・東京都・政府による4者会談で、小池百合子都知事から明かされた。前日の10月31日、小池氏の連絡に対してトーマス・バッハIOC会長が返事をしたものだといい、「IOCから都民に誠意を示す必要があると、私に提案があった。具体的な企画はこれからIOCと検討したい」と前向きだ。コーツ氏も「この提案をすることで、都民に祝福する機会を与えたい」としている。
ツイッター上の反応は芳しくない。あくまで「五輪のマラソン」を東京で見たいのに、ということのようだ。
「IOC会長の『セレブレーションマラソンをやったらどうか』という舐めっぷりは流石にしかめ面しても許される案件」
「セレブレーションマラソンはオリンピックじゃない、それなら全国どこかでやってる大会と変わんんねーよ」
「何か騙されてる感あるよな」
「東京で本戦はやらない代わりに別のイベントやればいいじゃん?って意味がよくわからない なんか、バカにされてるような気がするのは私だけ?」
東京には大規模な「東京マラソン」が既にある。一般市民から海外有力ランナーまで集う。しかし、元宮崎県知事の東国原英夫氏はそれでも、ツイッターでセレブレーション・マラソンに賛同の意を示している。
「市民ランナー的には歓迎である。東京マラソンは只でさえ当選倍率が高い。東京で年に2回やるのも有りである」
「今回、『アスリートファースト』ばかりが叫ばれ、余り議論されてないが、オリパラ誘致の重要性な意義・目的の一つに、都民・国民に広くスポーツに接して頂き、スポーツを通じた交流と健康増進等がある」
「目的は、多くの方々に参加してほしいということ」
コーツ氏は組織委との合同会見で、セレブレーション・マラソンの計画の一端を明かしている。「国際陸上競技連盟や、日本陸上競技連盟と話を詰めないといけない」と前置きしながら、こう述べた。
「ただ私個人としては、非常に知名度が高いハイプロフィールのランナーから、一般のマラソンランナーまで参加しないといけないと思っている。
目的は、多くの方々に参加してほしいということだ。大会の新たなプレゼンテーションを考えている。シニアからジュニアまで、大量参加のマラソンだ。もちろん世界有数のランナーにも参加してほしい」
時期や費用については明かされなかったが、もし五輪と近接することになれば、「暑さ対策」を掲げて札幌に変更した意味がなくなり、反発が予想される。費用についても、札幌への変更における「合意のポイント」4点のうちの3点目、「既に東京都・組織委員会が支出したマラソン・競歩に関連する経費については、精査・検証の上、東京都において別の目的に活用できないものは、東京都に負担させないこと」との絡みがネット上で指摘された。
というのも、都は五輪マラソン開催に向けて費用を投じてきたが、
「セレブレーションマラソンやるってなったらこの条件無いに等しくない?」
「マラソンやったら対策費を無駄にしなかったことになっちゃうじゃん」
と、セレブレーション・マラソン開催によって、マラソン・競歩関連経費を「別の目的に活用」できたことにされないか、という懸念があがっている。
「IOCの政治的完勝」?
小池氏は最後まで東京開催にこだわり、今回の「合意のポイント」2点目では「マラソン・競歩の会場が札幌に変更された際に発生する新たな経費は、東京都に負担させないこと」と都の負担についても定められた。それでも小池氏は「合意なき決定」としており、心中は穏やかでない。
その上で飛び出した実体の見えないセレブレーション・マラソン。前都知事の舛添要一氏はツイッターで、IOCの思考について
「マラソン・競歩の札幌開催は、IOCに言わせれば『小池問題』だった。何でも政治目的のパフォーマンスに変えてしまうのに辟易したIOCは、彼女を蚊帳の外に置いた。そして、都の経費負担なし、五輪後のセレブレーションマラソンなどの餌で黙らせた。赤子の手をひねるようなもので、IOCの政治的完勝だ」
と推察した。