一度は飛行機に乗り込んだ乗客が、保安官に力ずくで引きずり降ろされるという前代未聞の出来事が、米国・シカゴのオヘア国際空港で起きた。この様子はソーシャルメディアで動画が拡散され、航空会社には非難が殺到している。
米大手航空会社のユナイテッド航空が予約を過剰に受け付けた(オーバーブッキング)ことが原因。オーバーブッキングへの対応は搭乗が始まるまでに完了させるのが一般的で、搭乗後にこういった強硬措置が発動されるのは極めて異例だ。
オーバーブッキングで4人の乗客に降りるよう求め...
問題が起きたのは、2017年4月9日(現地時間)のシカゴ発ケンタッキー州・ルイビル行きのユナイテッド航空UA3411便。乗客がツイッターやフェイスブックに投稿した内容によると、乗客が搭乗した後にユナイテッド(UA)社員が、4人の乗客に対して他の便に振り替えるように求めた。UA社員4人が業務のためにルイビルに行かなければならない、というのがその理由だ。
しかし、誰からも振り替えを受け入れるという申し出がなかったため、UAは降りてもらう4人をランダムに決定。3人は降機を受け入れたが、残る1人は医師で、
「翌日に診察しないといけない患者がいる」
などとして拒否した。その後、UAは空港当局に通報し、保安官が男性を無理矢理座席から引きずり出して降機させた。男性は大声をあげて抗議し、周りの乗客もUAの対応に異議を唱える中、男性は両腕をつかまれて仰向けの状態で通路を引きずり出された。一連の様子を収めた動画は1000万回以上再生された。動画では、男性は顔が血まみれの状態になっていたことも、UAに対する批判が加速する原因になった。シカゴ警察が地元メディアに対して発表した声明によると、男性が飛行機から連れ出される際に
「頭部を座席の肘掛けにぶつけ、顔にけがを負った」
という。
この動画の反響が大きかったこともあり、UAのオスカー・ムノズCEO(最高経営責任者)は4月10日、ツイッターで
「すべてのUA従業員にとって、心が動揺する出来事だ。お客様を再収容(re-accommodate)せざるを得なかったことをお詫びしたい」
などと陳謝。この男性とは
「直接面会して対応し、解決したい」
と釈明した。「再収容」とは、オーバーブッキングで一部の乗客に降りてもらい、後続便に乗ってもらったことを指すようだが、この声明にも、
「医者を飛行機から引きずり降ろしておいて『再収容』か」
といった批判が出るなど、火に油を注ぐ事態となっている。