米国のトランプ大統領が英紙のインタビューで、北朝鮮に対して改めて強硬姿勢を強調した。中国は北朝鮮に対して最も大きな影響力を持っているが、トランプ氏は「中国は、ほとんど何もしてくれなかった」とツイッターで非難していた。
トランプ氏は中国の習近平国家主席をフロリダの別荘に招き、2017年4月6、7日にかけて初の首脳会談を行う予定だ。トランプ氏は首脳会談を前に、中国の協力が得られない場合は「我々がやる」と明言。具体的に何を行うかは明言しなかったが、すでにティラーソン国務長官は北朝鮮に関する先制攻撃も排除しない方針を表明している。一方で、北朝鮮はミサイルの発射訓練を「在日米軍基地を打撃」する部隊が行ったと主張しており、このまま緊張が高まれば、日本が標的になる可能性も現実味を持つ。
核開発を懸念、場合によっては先制攻撃も
トランプ氏は2017年4月2日(英国時間、日本時間3日未明)に英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙がウェブサイトに掲載したインタビューで、米中首脳会談で北朝鮮問題について協議することを明らかにした上で、
「中国は北朝鮮に大きな影響力を持っている。中国は北朝鮮について我々に協力するか、しないかを決めることになるだろう。もし協力するのであれば中国にとって非常にいいことだし、しないのであれば、だれにとっても良くないことだ」
などと中国側の協力を求めた。その上で、
「中国が北朝鮮問題を解決しないのであれば、我々がやる。これが、伝えられることのすべてだ」
と述べた。記者が
「中国の協力なしで問題を解決できると考えているのか」
と念を押すと、トランプ氏は
「そのとおりだ」
と断言した。トランプ氏は北朝鮮に対して具体的に何を行うかは明言しなかったが、トランプ政権の閣僚らは、北朝鮮の核開発を懸念し、場合によっては先制攻撃も辞さない方針を示唆している。
「『戦略的忍耐』の政策は終わった」
トランプ大統領の副補佐官(国家安全保障担当)キャサリン・マクファーランド氏は同日付けFTの別のインタビューで、
「トランプ政権の最初の任期終わり(2021年1月)までに、北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルで米国を攻撃できるようになる現実的な可能性がある」
と述べているほか、ティラーソン国務長官は3月17日、就任後初めて訪問した韓国で、
「(オバマ政権など過去の政権が取ってきた)『戦略的忍耐』の政策は終わった」
「(北朝鮮の)武器開発の脅威のレベルが、我々が対応が必要だとするレベルにまで高まれば、この(先制攻撃の)選択肢は検討されることになるだろう」
と発言している。ティラーソン氏の発言後、トランプ大統領は
「北朝鮮の振る舞いは非常に良くない。何年間にもわたって米国をもてあそんできた。中国は、ほとんど何もしてくれなかった」
とツイート。中国に対する不信感をにじませていた。
弾頭ミサイル発射したのは「有事の際、在日米軍打撃する」部隊
北朝鮮は2017年3月6日朝に弾道ミサイル4発を発射し、そのうち3発を日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させている。翌3月7日に国営メディアが伝えたところによると、ミサイル発射は「有事の際、在日米帝侵略軍基地を打撃する任務を受け持っている」部隊が担当した。
こういったことから、仮に米軍が先制攻撃に踏み切り、北朝鮮が反撃した場合は、在日米軍基地が矢面に立つことになる可能性がある。BBCは今回のトランプ氏の発言を伝える中で、弾道ミサイルの発射も首脳会談の議題になる見通しを報じ、専門家の話として、北朝鮮がターゲットにしている米軍基地は岩国基地(山口県)だとの見方を伝えている。
4月3日には、日米韓の3か国が合同で韓国の済州島沖で潜水艦の探知・追跡訓練を始めたばかり。訓練は、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLMB)の開発を進めていることを念頭に、3か国が一体的に対応できるようにする。北朝鮮がさらに反発を強める可能性もある。