破産手続き開始決定を受けた旅行会社「てるみくらぶ」だが、2017年4月に新卒で入社予定の内定者が約50人いた。「てるみくらぶ」は3月27日に内定者を集め、「内定取り消し」を通知した。
入社目前に就職が白紙となった内定者たちだが、彼らを「採用する」と表明する企業が相次いで出始めている。
「困っている方々の力になれれば」
てるみくらぶは利用客が航空券を発券できなくなるトラブルが相次ぎ、3月27日に破産手続き開始の決定を受けた。同日、17年4月に新卒入社予定の約50人を集めて説明会を実施。28日放送の「スッキリ!!」(日本テレビ系)では山田千賀子社長が「本当に申し訳ありませんがみなさんは『内定取り消し』という取り扱いになります。てるみくらぶは今日破産して、自分たちの自由な状況にないのです」と話す音声が流された。
入社5日前にして内定者は路頭に迷わされた。番組では、内定者の女性が「就職のためにすでに引っ越しており、新生活のために50万円ほど費用をかけました。怒りを通り越して放心状態で呆れています。私の人生を返してほしいです」と訴えた。
そんな中、てるみくらぶ内定者を受け入れるという企業が出ている。弁護士法人・アディーレ法律事務所(本社・東京都豊島区)は3月29日、「『てるみくらぶ』から、内定取り消しを通告されてしまった学校卒業生の皆さまの採用を行う」と公式サイトで発表。17年4月2日15時までに連絡すれば「選考を行わず内定を出す」という。
てるみくらぶとアディーレ法律事務所とでは業界がまったく異なるが、同所広報担当者はJ-CASTニュースの取材に対してこう話す。
「すでに引っ越しも済ませている方ばかりでしょうし、このまま新年度を迎えると生活が苦しくなると思われます。当事務所は弁護士に限らず事務職の新卒採用も毎年行っており、現在も、人材を募集しておりましたので、困っている方々の力になれればと今回の発表に至りました。『法律事務所で働いてみたい』という気持ちがあれば内定を出させていただく予定です」
通常の選考活動で内定に至らなかった新卒生にとっては納得がいかないのではないか、と聞いたところ、「疑問はゼロではないとは思います。通常の選考の方は、勤務開始までに複数会社への応募等が可能であるのに対し、今回の対象はもともと内定をもらっていながらも突然取り消しをされた方ですので、かかるご事情に鑑み、特別な対応を検討させていただいたものです」と話していた。
「そんなに人がいるなら是非欲しい」
警備会社のJSS(本社・東京都台東区)も門戸を広げている。倭文浩樹(しとり・ひろき)社長が3月28日、ツイッターで「てるみくらぶに内定されてた新卒の方は無試験で株式会社JSSで採用させていただきます。※法令で定める欠格事由に該当する方を除きます」と表明。こちらも「無試験」を明示している。
倭文社長はJ-CASTニュースの取材に対し、今回の意図について「私の思うところでは旅行会社は大学生に人気の業界で、そんな会社から内定をもらった実績があるならうちにとって優秀な人材だろうと見込んでいます」と話す。さらに、社内事情をこう明かす。
「当社を受ける人は公務員などとの併願が多く、両方内定が出たらそちらへ流れてしまいます。当社としては『来る者拒まず』の姿勢でウエルカムなのですが、そんな事情もあって人手が足りていません。他社からの仕事の依頼を断る例も少なくありません。今回のてるみくらぶの内定取り消しのニュースを読んで、そんなに人がいるなら是非欲しいと思った次第です。やる気さえあれば採用する予定です。警備の仕事よりも本社内での事務方の仕事での採用を考えています」
3月29日時点で受付の期限は設けておらず、「問い合わせがあれば個別に対応していきます」という。
また、てるみくらぶに近い業界では、ホテルや旅館を含む宿泊施設の業界広報を手がける財団法人・宿泊施設活性化機構(略称:JALF(ジャルフ))が3月28日夕、公式フェイスブック上で「『てるみくらぶ』をはじめとする内定を取消された学校卒業生の方々へ。『その身柄、JALFで引き受けます』キャンペーンを行います」と投稿した。「社会貢献の一環として『とりあえず引っ越してしまって困っている』方々も含め、選考を行わず内定を出します」としており「ご希望の学卒者の方々は、ダイレクトメッセージをください」と呼びかけている。受付期限は3月31日23時59分までとしている。