東日本大震災の発災から丸6年を迎えた2017年3月11日、安倍晋三首相は政府主催の追悼式に出席し、式辞を述べた。
2012年から毎年行っている首相式辞だが、今回は「復興加速」を強調。だが、初めて「原発事故」の文言が使われなかった。一方で、秋篠宮さまのお言葉では「放射線量」に言及。両者の違いが際立つ形になっている。
安倍首相「復興は着実に進展していることを実感」
安倍首相は冒頭「衷心より哀悼の意をささげます」と追悼すると、復興の状況に言及した。
「被災地に足を運ぶたび、震災から6年を経て、復興は着実に進展していることを実感します」
インフラ復旧や住宅再建、福島での避難指示解除に触れ、「復興は新たな段階に入りつつあることを感じます」。被災地域の人々をはじめ、日本国内外からの支援を受け、「関係するすべての方々の大変なご尽力に支えられながら復興が進んでまいりました」と、ここでも「復興」の言葉を使った。被災者について「今なお12万人の方が避難され、不自由な生活を送られています」と困難な状況が続いている点にも触れていた。
ただ、12年に野田佳彦首相(当時)、13~16年に安倍首相自身も触れていた「原発事故」については、今回は言及がなかった。
秋篠宮さまは「放射線量」に言及
これに対して、追悼式でお言葉を述べた秋篠宮さまは、「避難生活が長期化する中で、年々高齢化していく被災者の健康や、放射線量が高いことによって、いまだ帰還の見通しが立っていない地域の人々の気持ちを思うと深く心が痛みます。困難な状況にある人々誰もが取り残されることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができる日が来ることは、私たち皆の願いです」と言及している。
3月11日の節目に合わせて毎年行われてきた首相記者会見も、17年は行われなかった。3月10日の官房長官会見では「被災地の復旧復興に対して政府の取組が後退したと受け取られないか」との質問が出たが、菅義偉官房長官は「そこは全くないと思っている」と否定。菅氏は、
「明日(11日)、追悼式典において総理は追悼の言葉を申し上げるし、明後日(12日)は岩手県を訪問し、その際に被災された方々へのお見舞いと復興に向けた取り組みについて総理大臣として発信する予定」
とも述べた。
山口二郎氏「安倍政治の本質は忘却だとつくづく思った」
政府の3月11日におけるこうした変化に、一部では疑問が出ている。法政大学法学部教授の政治学者・山口二郎氏(58)は12日、ツイッターで
「311への対応を見て、安倍政治の本質は忘却だとつくづく思った。あの震災も、原発事故もすべてなかったことにしたい。避難した被災者も早く故郷に戻れ、まだ逃げ続けるのはお前らの勝手だから支援はしないという冷酷非道の政策」
と批判した。