学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐって、安倍首相が夫人・昭恵さんを「私人」と発言したことに批判が相次いでいる。
昭恵さんは2015年9月5日、同法人が開校を目指す小学校「瑞穂の国記念小学院」のために、政府が用意した5人のスタッフを伴い、同学園の運営する塚本幼稚園で講演を行った。ほぼ同時期に、この小学校の名誉校長に就任している(2017年2月に辞任を発表)。「妻は私人」という安倍首相の主張は、ぐらつき始めている。
塚本幼稚園には政府のスタッフも同行
17年3月1日に開かれた参院予算委員会での一幕。共産党・小池晃書記局長に「総理夫人は、籠池氏(編注:森友学園理事長)といつからの知り合いか? これまで何度会われているのか?」と問われた安倍首相は、こう言葉を荒げた。
「いつか分かりませんよ。妻は私人なんです。妻をまるで犯罪者扱いするのは不愉快ですよ」
これに小池氏は
「『私人』とおっしゃいますが、パンフレットにも出ている。講演会でも『内閣総理大臣夫人』という肩書が紹介されている。(同学園が運営する)塚本幼稚園の訪問が3回ある」
と反論した。
あくまで昭恵さんを「私人」だと言い張る安倍首相。しかし、昭恵さんは「安倍首相夫人」として同学園に関わっていた可能性が高い。
その「証拠」は3日の参院予算委員会で土生栄二内閣審議官の口から明かされた。昭恵さんは15年9月5日、政府の付けた5人のスタッフを伴い、塚本幼稚園で講演を行っていたのだ。
昭恵さん本人も同日、塚本幼稚園でスピーチする自身の写真をフェイスブックに投稿し、
「園児達は大変お行儀が良く元気です。毎朝君が代を歌い、教育勅語、論語や大学などを暗唱」
と報告している。そして、17年3月3日午後6時現在も、フェイスブックには塚本幼稚園公式サイトのリンクまで貼り、塚本幼稚園を紹介している。
この講演について、土生氏は「公費による出張ではなかった」と釈明したものの、質問に立った民進党・玉木雄一郎議員は、
「公務員を伴っているのは事実で、完全に私的行為と言うのは難しい」
と指摘した。
森友学園、鴻池会見を「捏造」と批判
こうした展開に、ツイッターでも
「誰が見たって『公人』だろ」
「明らかに公人だ」
「公私混同もはなはだしい」
「(安倍首相夫妻は)公私混同して内閣総理大臣夫妻の地位を私的に利用した」
との声が相次いでいる。
一方、自民党の鴻池祥肇・元防災担当大臣は3月1日の会見で、同学園の籠池泰典理事長夫妻が14年に参院会館に鴻池氏を訪れて、封筒に入った現金のようなものを渡そうとしたことを明らかにした。鴻池氏は会見で当時の状況を説明し、封筒は受け取っていないと強調した。しかし、その後、同学園への国有地売却をめぐり財務省近畿財務局と鴻池事務所の間で数回のやり取りがあったことも報じられたほか、籠池理事長が大阪維新の会所属の大阪府議と会って、学校用地の取得について協力を求めていたことも明らかになるなど、森友学園側の政治家への働きかけが次から次へと明らかになっている。
森友学園の代理人弁護士は、同学園の籠池泰典理事長が14年、商品券の入った封筒を手渡そうとしたと報道各社の取材に認めていた。
その後、同学園側は3月3日、瑞穂の国記念小学院の公式サイトで文書を発表し、
「会見の内容自体に時系列の矛盾や合理性を欠くものを含むもの」
「事後的に捏造された文書で、献金や寄付を強要していた事実を揉み消そうとする態度には嫌悪感しか感じません」
と鴻池氏を批判している。