ワイドショー番組「白熱ライブ ビビット」の放送内容で、ホームレスの男性を「人間の皮を被った化け物」と表現した内容などに不適切な点があったとして、TBSは2017年3月3日、番組中に謝罪した。番組サイトでは論点を整理した詳しいお詫び文を掲載し、「やらせ」があったとも認めている。
TBSはその前日2日にも、ドラマ「カルテット」に誤解を招く表現があったとしてプロデューサーが「本当に申し訳ありませんでした」と謝ったばかりで、連日の謝罪となった。
ホームレスを「多摩川リバーサイドヒルズ族」
「ビビット」の騒動の発端は、多摩川河川敷で生活するホームレスを取り上げた1月31日の放送内容だった。あるホームレス男性が飼う17匹の犬が近隣住民に迷惑をかけているとして、この男性を「犬男爵」「人の皮を被った化け物」と表現。
番組スタッフの直撃取材を受けたこの男性が「何やってんだ!勝手に入りやがって」と怒鳴り声をあげる場面も流れた。その他「カラスを飼うホームレス」「テレビ鑑賞ホームレス」など約600人のホームレスがいるとして、河川敷に住む人々を指して「多摩川リバーサイドヒルズ族」と名付けていた。
この放送にインターネット上で批判が殺到。日本テレビの元ディレクターで現在は上智大学教授の水島宏明氏は、「Yahoo!ニュース個人」に2月2日、「相当に悪質な人権侵害」「ホームレスの人たちへの差別や偏見を助長する『ヘイト放送』といっていい」と批判する記事を寄稿した。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連・理事長も2月6日、同サイトに記事を寄せ「ホームレスの人はこんなに怖い人たちだ、的なことを煽って煽って煽りまくっている、という印象を受けました」と不快感を露わにした。
さらに水島氏は追って2月27日にも同サイトへ寄稿し、番組で取り上げられた犬を飼うホームレス男性に水島氏自身が取材したという内容を掲載。怒鳴り声をあげるシーンについて「この場面はTBSに頼まれた」と話していたという。
ツイッター上でも「悪質な演出。背景性を無視してホームレス問題を矮小化。ホームレスに対する冷たい視線・暴力・無知無理解を正当化し強化するもの」「これは酷い。問題提起ではなく、ホームレスの一面を都合良く刈り取った」などと相次いで放送を疑問視する声が上がっていた。
「『お前らここで何やってるんだ、と言いながら歩いてきてほしい』と伝えました」
こうした状況を受けて3月3日放送の「ビビット」では、吉田明世アナウンサーが次のように謝罪した。
「1月31日に、多摩川で生活しているホームレス問題を取り上げました。この放送について、ホームレスの方々に対する差別や偏見を招くものであったという厳しいご指摘をいただきました。放送内容と制作過程を改めて検証し、取材した男性を傷つける表現や、取材手法に不適切な点があったと考えます。このような放送をしたことについて、視聴者の方々、関係者の方々、そして何より取材を受けていただいた方々に、深くお詫び申し上げます。いただいたご指摘をしっかり受け止めて、こうしたことが再び起きないように努めてまいります」
TBSの番組公式サイトでは問題点を詳述している。「犬男爵」「人間の皮を被った化け物」「多摩川リバーサイドヒルズ族」などの表現を「不適切であったと考えています」とし、カメラインタビューの中には「ご本人の承諾を得ずに撮影された」ものがあったと認めた。また、直撃取材した犬を飼うホームレス男性について
「(撮影日の前日に)取材の承諾を得ていました。当日、取材ディレクターは、出会いの場面を撮影するにあたって、男性に『お前らここで何やってるんだ、と言いながら歩いてきてほしい』と伝えました」
と「やらせ」を認めている。その結果として「『すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物』と印象付ける結果となり、不適切な手法でした」としている。
TBSは3月2日も、「カルテット時間軸ズレてる問題」について、佐野亜裕美プロデューサーがドラマ公式ツイッターで「私達の単純なミスです」として謝罪している。劇中に登場するスマートフォンやカレンダーの日付を追うと、1話で2月12日、5話で2月11日、6話で2月6日と話が進むにつれて遡っていると視聴者が発見し、これが何かの伏線ではないかとさまざまな憶測を呼んでいた。
佐藤プロデューサーはこの問題について、「ドラマは基本的に第1話から時間順に進んでおります。つまらないミスで、楽しんで観てくださっている皆様に誤解を与えてしまい、心よりお詫び申し上げます」とツイートした。
ドラマの中で映される日付には、特別な意味はなかったということのようで、「(憶測が)あまりにも広がっていくのを黙って見ていられず、どうにか食い止めたく思いました」と、謝罪の意図を説明している。