山陽新幹線の新大阪~新神戸間にある「六甲トンネル」(神戸市中央区~兵庫県西宮市、全長およそ16キロ)内で、温泉由来の水蒸気がこもる珍事が起こった。
2時間半にわたって新幹線を止め、2万人以上の乗客に影響を及ぼしたこのトラブル。当時の詳しい状況を取材した。
トンネルの入り口から4キロ先に「源泉」?
JR西日本の新幹線管理本部によると、六甲トンネルの新神戸側入り口で白煙が確認されたのは17年3月1日5時49分。この影響で、新大阪~岡山間は始発から上下線で運転見合わせとなり、7時からは新大阪~博多間に範囲が拡大した。
全線で運転再開となった8時25分までのおよそ2時間半、上下線あわせて11本が運転休止、49本が遅延、2万3000人もの乗客が影響を受けた。1日の産経新聞(電子版)報道などによると、今回のような理由で(兵庫県内で)新幹線が止まった事は過去に例がない。
しかし、これだけ大きなトラブルにも関わらず、トンネル火災や車体の損傷は一切確認できなかったという。現地に駆け付けた神戸市消防局の担当者は、3日の取材に対し、
「到着したときトンネルの入り口にうっすら白煙が漂っていましたが、火災や黒煙は見られませんでした」
と明かす。
居合わせた関係者からの「又聞き」で、「トンネルの入り口から4キロ先に有馬温泉(神戸市北区)の源泉が湧いているらしい」との情報を入手していた。ただ、距離もあったため、実際に湧いているかどうかは確認しなかったという。担当者は
「寒い日に吐いた息は白く見えるでしょう。それと同じく、内外の気温差が原因で、トンネル内に温泉由来の水蒸気がこもっていたのではないでしょうか」
と推測する。
「有馬温泉とは全然泉源が違います」
こうした「有馬温泉源泉説」を、マスコミ各社もこぞって取り上げた。たとえば産経新聞電子版は3月1日付け記事で、「犯人は有馬温泉の湯気?」と伝えた。
本当に有馬温泉の源泉がトンネル内に湧いているのだろうか。有馬温泉観光協会の担当者は、「有馬温泉とは全然泉源が違います」と一蹴する。有馬温泉の泉源は、六甲山の裏手にあたる有馬地域。六甲山の表を走る六甲トンネルから湧き出ることは「ありえない」とする。
ただ、六甲山近辺は比較的温泉が湧きやすく、
「有馬温泉とは別の温泉が湧き出ているのではないか」
とも指摘した。
いずれにせよ、温泉由来の湯気であるのは間違いないようだ。ただ、温泉とともに可燃性の天然ガスが噴出している可能性もある。
07年6月には、東京都渋谷区の温泉施設で天然ガスの引火爆発事故が起こった。今回のケースとは環境も状況も異なるが、そうした危険性に留意しておく必要はあるかもしれない。