学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐり、野党が問題視している問題のひとつが、売却された国有地に建設中で2017年4月に開校を目指している小学校「瑞穂の国記念小学院」の設置認可が下りていないことだ。
過去にも認可が開校の直前にずれ込んだケースはあったが、今回は、大阪府の諮問機関、私立学校審議会(私学審)が「認可相当」の答申を出した後に様々な問題が噴出。私学審の会長は、問題視されている学園の教育内容を審議過程では詳しくは把握していなかったことを明らかにしている。松井一郎知事も、建設用地に埋まっている廃棄物の処理によっては認可が難しいとの見方を示しており、認可されるかどうかが不透明になっている。
私学審では学園の財務体質不安視する声
小学校の開校は17年4月に迫っているが、設置認可はまだ下りていない。この事実は2月20日の衆院予算委員会で民進党の玉木雄一郎議員が問題視し、広く知られるようになった。
学園は14年10月に小学校の設置認可を申請。同12月に開かれた府の諮問機関、私立学校審議会(私学審)では、委員から財務体質を不安視する声が出たため継続審議となったが、15年1月の臨時会では
「小学校建設に係る工事請負契約の締結状況、寄附金の受入れ状状況、詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況等、開校に向けた進捗状況を、次回以降の当審議会定例会において報告すること」
という条件付きで「認可適当」の答申が出た。この「報告」の場が17年2月22日の私学審臨時会だったが、1、2学年の定員それぞれ80人に対して入学予定者は1年生40人、2年生5人にとどまっていることも明らかになり、委員からは再び財務体質を不安視する声が出た。3月の定例会で改めて私学審として判断し、それをもとに府が認可の是非を判断する。
松井知事「廃棄物で悪影響が出るとなれば認可できないことに...」
大阪府下での私立学校の認可が、開設直前まで下りないケースは今回だけではない。例えば2010年に開設された関西大学初等部・中等部・高等部は、4月2日に入学式が行われたが、大阪府の設置認可が下りたのは、その3日前の3月30日だった。
だが、今回のケースでは、現段階でも不透明な要素が残っている。私学審の梶田叡一会長は17年2月28日に民進党が行った聞き取り調査に対して、学園が運営する幼稚園の運動会で園児が「安倍首相頑張れ」などと選手宣誓した問題などについて、審議の過程では詳しく把握していなかったことを明らかにしている。今井雅人衆院議員が記者団に対して明らかにしたところによると、答申後に新たな事実が次々に明らかになったとして、梶田氏は「困惑している」と話したという。
松井一郎知事は2月28日、
「廃棄物で子どもたちの健康に悪影響が出るとなれば、(府)教育庁として認可できないことになる」
と述べ、「埋め戻した」との指摘がある(学園側は否定)敷地内の廃棄物が適切に除去されることが認可の前提になるとの見方を示した。
過去に学校の設置が認可されなかった例としては、学校法人「幸福の科学学園」が15年に開設しようとした「幸福の科学大学」(千葉県長生村)などがある。同大は現在、「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)という「私塾」として運営されている。