東電が公募社債を発行できるカラクリ 実質「破綻」企業がなぜ

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   東京電力の社債発行が話題となっている。

   東日本大震災で福島第1原子力発電所が未曾有の原発事故を発生させ、原子炉の廃炉や事故の賠償などで多大な費用負担を抱え、東電自体が国有化されているうえ、原発リスクを抱えた電力債の公募発行は難しいとの見方が強かったためだ。

  • カラクリの中身は?(東電HDのホームページのスクリーンショット)
    カラクリの中身は?(東電HDのホームページのスクリーンショット)
  • カラクリの中身は?(東電HDのホームページのスクリーンショット)

原発リスクを遮断するための分社化

 

   東京電力は、2016年4月1日に組織改革を行って持株会社化し、旧東京電力は東京電力ホールディングス(以下、東電HD)に姿を替え、傘下に一般送配電を行う「東京電力パワーグリッド」、燃料・火力発電事業を行う「東京電力カフュエル&パワー」、小売事業を行う「東京電力シナジーパートナー」を100%子会社としてぶら下げている。そして、問題の原子力発電などは、東京電力ホールディングス自らが行っている。

 

   東電HD自体は、昨年12月9日に経済産業省から福島第1原発の廃炉や賠償にかかる費用が総額21.5兆円にのぼるとの新たな見積もりが出され、国有化が最低3年延長される見通しが示されており、おおよそ公募の社債が発行できるような企業ではない。

 

   何しろ、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構からは、2月時点で61回目の資金交付を受けており、その金額は6兆8518億円に上る。加えて、補償金として1889億円も受領している。これらの合計7兆円超は、実質的には国民負担であり、事実上の経営破綻企業なのだ。

 

   従って、今回の公募社債の発行には「カラクリ」がある。今回の社債発行の主体は、東京電力パワーグリッドで、事実上、東電とは別の法人格であるという点だ。パワーグリッド社は、前述の通り一般送配電を行っている会社で、「原発リスク」はない。

金融緩和で利回りの高い電力債は魅力

 

   実は社債という意味では、東電(現在の東電HD)は私募による社債を発行している。2012年には7264億円に上る巨額の私募債を発行した。下記のURLは東電のホームページにある社債の発行状況だが、これを見ればわかるように2012年以降、毎年のように、私募による社債は発行してきているのだ。

http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/investment/bonds-issued-j.html
 

   ただし、私募債の引受手(購入者)は、ほとんどが東電の取引金融機関、融資を受けている金融機関ということになる。12年の7264億円の私募債は、メインバンクからの融資に対する事実上の担保として発行されたものだった。換言すれば、公募債としての社債を発行する信用力はないが、融資を受ける際の担保として社債はその役割を果たしてきたということだろう。

 

   東京電力パワーグリッドは2月15日、関東財務局に2件の社債発行に関する有価証券届出書を提出した。3月中にも、3年債を300億円、5年債を400億円発行する計画だ。この公募社債発行の背景には、東電HDとは別の法人格である東京電力パワーグリッドが発行することで、「原発リスク」を回避できることに加え、もうひとつの大きな要因がある。それは、日銀の強力な金融緩和政策による国内機関投資家の運用難だ。

 

   ある地銀大手行の資金運用担当者は、「東京電力パワーグリッドが発行するとはいえ、電力債であることに変わりはない。電力債は原発リスクという潜在的なリスクから、他の業種の社債よりも利回りが高くなるため、資金運用に苦しむ国内機関投資家にとっては、十分に魅力のあるものだろう」という。

 

   つまり、日銀の金融緩和政策が、東電にとっては、公募社債という資金調達を再開するための強力な援軍となったということになる。

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