科学専門誌「Newton」を発行する出版社ニュートンプレスは2017年2月20日、東京地裁に民事再生手続きを申し立て、保全命令および監督命令を受けたと発表した。負債総額は20億円にのぼる。
同社は今後も、雑誌「Newton」の販売はこれまでと変わらず続ける。同社の高森康雄社長は20日夜の会見で、誌面の内容変更やページ数の削減といった点についても、「現時点では予定していません」と話した。
Newtonの販売を続けることが「社会的使命」
ニュートンプレスをめぐっては、雑誌の定期購読者から不正に出資を募ったとして、元社長の高森圭介容疑者(77)ら2人が出資法違反の容疑で2月17日に逮捕されたばかり。現在の同社取締役の高森康雄氏は、逮捕された圭介容疑者の長男にあたる。
各メディアの報道によれば、圭介容疑者は出資者に対し、
「タブレットを使った小中学生向けの理科の教材の開発に出資すれば確実にもうかる」
などと持ちかけ、1200万円を違法に集めた疑いが持たれている。
こうした状況の中、ニュートンプレスは20日、東京地裁に民事再生手続きを申し立てたことを公式サイト上で発表。その背景については、
「前代表者の逮捕を含め、当社を取り巻くさまざまな状況を踏まえると、裁判所及び監督委員の監督・指導を受けながら経営改善を進めることが、当社の再建にあたり最良であると判断した」
と説明している。続けて、「雑誌『Newton』を維持・存続させることが、当社に課された社会的使命と考え、引き続き全力で再建に臨みたいと考えております」ともコメントした。
高森康雄取締役「全力で会社を再建させる」
高森康雄取締役は20日夜に都内で開いた会見で、一連の騒動について、
「多大なご迷惑をおかけして、大変申し訳なく思っております。今後、全力で会社を再建させたく思っています」
と謝罪した。
ただ、同社の看板雑誌である『Newton』の販売は続ける。会見に同席した担当弁護士は「Newtonの販売によって、債務の返済を進めていきたい」と今後の方針を説明。編集部員の削減や誌面内容の変更について、康雄取締役は、
「現時点では予定していません。これまでと同じです」
と明言した。
なお、元社長の圭介容疑者の逮捕後にも、雑誌の売上に「変動はいっさいない」という。担当弁護士は「むしろ『Newton』を守ってくれという激励の声ばかり頂いている状況です」とも話していた。
会社側の説明によれば、今回の負債の大半は雑誌の定期購読者を中心とした個人からの資金借り入れが占める。負債の総額は約20億円で、債権者数は約600人に達する。集めた資金の使途については、逮捕された高森圭介容疑者が運営していた別会社のニュートン社で、
「タブレット端末を使った理科教材などに使っていた」
と説明していた。