絶滅が危惧される太平洋クロマグロ(本マグロ)を保護するための漁獲規制に違反する事例が、全国で相次いで発覚している。日本はマグロ消費量が断トツに多いだけに、資源管理が甘いと国際的な批判を招く恐れがある。
日本周辺を含むマグロ資源を管理する「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」は2014年、資源保護を目的に30キログラム未満の幼魚の漁獲量を「2002~2004年平均の半分以下」に抑えることなどを決めた。この決定に基づき日本政府は沿岸クロマグロ漁を「承認制」とし、地域や漁法ごとに漁獲していい上限を定めている。
他の魚種の漁との区分が難しい
ところが、2016年11月、長崎県と三重県でルール違反の懸念が表面化し、水産庁が調査を開始。同12月にまとめた中間報告で、長崎県の対馬では約12トンを無承認で漁獲した可能性があるほか、約30トンにのぼる未報告の漁獲量が明らかになった。このため、マグロ漁を行う全39都道府県の2015~2016年の水揚げを対象に徹底した調査を年明けから実施。17年2月3日の同庁の発表によると、静岡、和歌山など新たに7県で、報告がなかったり、漁獲量の集計が不明確だったりと、漁獲の実態を把握していなかったことが判明。うち1県では未承認でクロマグロ漁をしていた疑いもあったという。
水産庁は原因として、規制の周知不足や、漁業者が規制を守る意識が低いことなどを挙げる。そもそも、漁業には他の魚種の漁との区分が難しいという根本的な問題がある。定置網漁は海中に網を固定するので、サケやブリなどクロマグロ以外を狙っても、クロマグロだけ避けるわけにはいかない。しかも、クロマグロは広い海域に分布する。例えば対馬周辺では2016年夏ごろ、イカは不漁だったがクロマグロの幼魚は多く、イカを目的に出漁した漁船が、承認のないままイカが獲れない穴をクロマグロで埋めるといったケースがあったようだ。