女優の香里奈さん(32)主演のフジテレビ系ドラマ「嫌われる勇気」が、日本アドラー心理学会からその内容に抗議を受け、ネット上で波紋を呼んでいる。フジテレビは、J-CASTニュースの取材に対し、放送中止は予定してないと回答した。
アドラーは、フロイトやユングと並び称される心理学の大家だ。日本では、哲学者の岸見一郎氏らがそのアドラー心理学を解説したドラマと同名の著書が、シリーズ累計で計180万部を突破するベストセラーになっている。
同名著書は累計180万部のベストセラー
フジのドラマは、アドラー心理学と刑事ドラマを組み合わせたという異色のもので、2017年1月12日から毎週木曜日の夜に放送されている。岸見氏らの著書を原案にして、香里奈さん扮する警視庁の刑事がアドラーの説く「嫌われる勇気」を持って難事件に挑むというストーリーだ。視聴率は、6~8%台で推移している。
ところが、第5話の翌日となる2月10日になって、アドラーの研究と啓発をしている日本アドラー心理学会が、ホームページ上で中井亜由美会長名によるドラマへの抗議文をアップした。
そこでは、ドラマの内容は、「アドラー心理学における一般的な理解とはかなり異なっている」と指摘した。例えば、ドラマで主人公は、アドラーとして「私はただ、感じたことを口にしているだけ」の人物として描かれているが、それはアドラーの言う「相互理解のための努力」を放棄しているとしている。
学会では、ドラマにも関わっている岸見氏に事情を聴いたうえで、学会の指導的立場にいる人と相談したところ、「アドラー心理学とは言えません」とコメントされたため、抗議することになったという。抗議文は、ドラマについて「アドラー心理学の啓発・普及に対して大きな妨げになる」として、フジに対し、放映の中止か、脚本の大幅な見直しを求めている。
フジ「放送中止は考えておりません」
一方、ダイヤモンド・オンラインの2月8日付のインタビュー記事によると、岸見一郎氏は、日本アドラー心理学会の認定カウンセラーや顧問もしている。岸見氏は記事で、フジテレビのドラマについて、ストーリー部分はテレビ局に任せて、アドラー的な解釈部分をチェックしていることを明かしていた。
ニュースのコメント欄などでは、ドラマが抗議を受けたことについて、意見が分かれている。
「アドラー誤解されてる気がする」「刑事ドラマにするって時点で無理っぽい」といった疑問の声が上がる一方、「ドラマのタイトルを地で行ってるわけだな」「アドラー心理学の注目度を高める功績もある」との評価も書き込まれている。岸見氏がドラマに関わっていることから、学会の中で、岸見氏もアドラーの解釈が違っているのではないかとの指摘も出ている。
フジテレビの企業広報部では2月13日、「ドラマ『嫌われる勇気』は、原案書籍『嫌われる勇気』を下地に、ドラマというエンターテインメントの要素と、アドラー心理学の描写のバランスを考えつつ、原案書籍の著者に脚本を監修して頂きながら制作しております」と取材に説明した。
学会側が放送の中止などを求めていることについては、「放送中止は考えておりません」と答えた。ただ、「脚本に関しましては、日本アドラー心理学会からいただいたご意見も、今後のドラマ制作に生かして参ります」と言っている。