金価格が、再び上昇している。東京商品取引所(TOCOM)は週明けの2017年2月6日、金先物市場の終値は1グラムあたり4414円を付け、前日(3日)と比べて17円も上昇した。
先週末に、米ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物市場が上昇したことを受けて「買い」先行で取引が始まり、その後も堅調に推移した。米国のトランプ大統領就任後の「入国禁止」などの混乱で、投資家がリスク回避姿勢を強めており、相対的に安全な「実物資産」とされる金に逃避資金が流入しているとみられる。
投資需要7割増、2012年以来の高水準
金の国際調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が2017年2月3日に発表した報告書によると、2016年の投資需要は前年と比べて7割増の1561トンに達し、2012年以来の高水準となった。投資マネーが大量に流れ込む場面が少なくなく、投資需要の大幅増につながった。
金の価格は、景気の後退局面や需要増、戦争や紛争などの政治・経済情勢が不安定な「有事」のとき、外国為替市場で基軸通貨の米ドルやユーロが値下がりした場合に上昇しやすい。その一方で、「実物資産」の金には、株高や景気の拡大局面の利上げは「売り」の材料となる。
2016年の金相場は乱高下した。英国のEU離脱の決定や米国のトランプ大統領誕生などで、金価格は一時急伸。半面、米国の景気拡大に伴う利上げでは急落した。
そうしたなか、金の価格は2017年1月31日以降、再び上昇基調を強めている。米ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物市場は、米国時間の31日に一時、1トロイオンス1217.4ドルと1週間ぶりに1200ドル台に乗せた。取引レンジは1195.6ドル~1217.4ドルで推移した。
トランプ大統領が、中東・アフリカ7か国からの外国人の入国を禁止した大統領令を出したことで抗議デモや取り下げ訴訟が相次いでいること、また中国の為替操作や、日本やドイツの「通貨安」を批判。それらを受けた外国為替市場でのドル安の進展や、一連の政策の警戒感から運用リスクを回避する逃避資金が、金先物市場に流入しているようだ。
こうした流れを受けて、東京商品取引所(TOCOM)の金先物市場も上昇している。日本時間の2017年2月1日、前日比16円高の1グラムあたり4382円で取引を終えた。その後も、好調な米国市場の上昇とともに値を上げてきた。 2月6日、米COMEXの金先物市場は1220ドル台で推移。引き続き、上昇基調にある。TOCOMの金先物市場も買いが優勢となり、堅調に推移した。
金投資に詳しい、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、「今回の金価格の上昇は、米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)が1日、追加利上げを見送ったことが直接の原因です。さらに、FOMCが『(トランプ大統領の)政策の出方を見たい』としたことで、次回(3月14、15日)も『利上げはない』との観測が広がったことがあります」と説明。当面は金利が上がらないため、「金は買いやすくなります」。