アパホテルが「南京大虐殺」を「中国側のでっちあげ」などとする書籍を客室に設置し、中国政府が批判を強めている問題で、騒動の発端になった書籍の増刷が決まった。ホテルを運営するアパグループが2017年1月27日、明らかにした。
購入希望が多数寄せられ、在庫が不足しているためだ。初版5万部で、2万部増刷する。一連の騒動で書籍の知名度が上がり、独自の主張を「読んでみたい」という声も増えているという。
ホテルのフロントや通信販売でしか購入できない
書籍は、16年6月に発売された「本当の日本の歴史『理論近現代史学II』」。アパグループ代表の元谷外志雄氏が「藤誠志」のペンネームで、グループの月刊広報誌「アップルタウン」に発表していた「社会時評エッセイ」の過去1年分をまとめた。当初は5万部が発行され、原則として国内アパホテル155ホテル、3万2673室に設置された。一般の書店では売っておらず、ホテルのフロントや通信販売でしか購入できない。800円だ。
一連の問題は、1月15日、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で書籍の内容を批判する動画が投稿され、拡散したのが発端だ。動画では書籍の表紙が大写しになり、知名度も上がった。J-CASTニュース記者も書籍を購入しようと千代田区内のホテルに出向いたが、フロントの担当者は
「好評をいただいており、品切れになっております」
と申し訳なさそうに話していた。
アパグループは、J-CASTニュースの取材に対し、騒動後の具体的な売り上げの変化については言及を避けたが、
「現在多数の該当書籍購入のご要望をいただいており、在庫が不足しております。そのため増刷を決定いたしました」
とコメント。一般の書店で市販する可能性についても
「ご提案をいただき良い条件であれば、検討する可能性もあるかもしれません」
とした。
「理論近現代史学」に基づく持論を展開
書籍に書かれた内容は元谷氏の主張を色濃く反映しており、発行部数が増えた分、波紋も大きくなりそうだ。書籍冒頭には元谷代表一家の旅行先などでのスナップ写真が7ページにわたって掲載され、その次にある「概論」では、中国や韓国が歴史問題で「情報謀略戦」を仕掛けてくるとして、
「誤った情報に対して、即座に24時間以内に反論できるような体制を作るとともに、ユダヤのマーケティング会社を利用して効果的に情報発信をしていくべき」
と主張。過去のエッセイでは自らが提唱する「理論近現代史学」に基づいて持論を展開したとして、
「張作霖爆殺事件がソ連の特務機関による謀略であったことや、南京30万人大虐殺が国府軍による捏造であること、従軍慰安婦20万人強制連行について、吉田清治の虚偽の証言を朝日新聞が大々的に取り上げたことなど、10のテーマについて具体的に論じた」
ことについて、
「多くの方々から賛同の声を頂いた」
と振り返った。
北朝鮮の列車爆発事故は中国による「金正日爆殺計画」
また、2004年に北朝鮮の龍川(ヨンチョン)駅で起きた列車爆発事故については、
「中国軍事委主席の江沢民による、北朝鮮の核開発阻止の最後の賭けと言ってよい」
として、この「列車爆破」は、
「忠告しても核を断念しない金正日を狙った爆殺計画であると見ている」
としている。こういった内容が、日本語と英語で、それぞれ100ページ近くにわたって掲載されている。
アパグループは27日のJ-CASTニュースの取材に対して、一連の騒動以降「1万数千件を超える称賛、激励のコメントが寄せられており、批判的な内容はごくわずか」だと説明している。