フリーアナウンサーの吉田照美さん(65)が公開した油絵作品がインターネット上で物議を醸している。
タイトルは「この世界の片隅の君の名は、晋ゴジラ」。その名のとおり、大ヒット劇場アニメ「この世界の片隅に」と「君の名は。」、そしてゴジラシリーズの最新ヒット作「シン・ゴジラ」の要素を取り入れた作品で、中央で存在感を放つゴジラは安倍晋三首相の顔をしている。
「このゴジラは、息を吐くように嘘をつく」
2005年頃から本格的に油彩に取り組み、「三軌展」などでの入選経験もある吉田さん。個展では風景画や人物画を中心に展示販売しているが、一方で力を注いでいるのが、時事ネタをテーマにした「ニュース油絵」シリーズだ。
今回注目を集めた油絵は同シリーズの最新作で、2017年1月13日に公式の個人サイト上で公開した。同日には、ジャーナリストの上杉隆氏がアンカーを務めるネット配信ニュース番組「ニューズ・オプエド」の「ニューズ油絵」コーナーでも披露した。
作品は「この世界の片隅に」「君の名は。」のメーンビジュアルをモチーフにしており、下方には「この世界~」の主人公・北條すずが、左右には「君の名は。」の立花瀧と宮水三葉が忠実に描かれている。その中央で圧倒的な存在感を示しているのが「晋ゴジラ」――安倍首相の顔をした巨大なゴジラである。
吉田さんは公式サイト上に作品に関するコメントを掲載。「キネマ旬報ベスト10」(1月10日発表)の結果に触れた後、3作には次のような「共通点」があると指摘した。
「『この世界の片隅に』は、広島の原爆、『君の名は』は、福島の原発事故を想像される出来事がモチーフ、『シン ゴジラ』は、核実験の放射線から生まれた巨大生物」
その上で「晋ゴジラ」については、先日、安倍首相がフィリピンに1兆円規模の支援を表明したことも持ち出しながら、
「このゴジラは、息を吐くように嘘をつき、自分のお金のように国民の税金を外国にばら撒きます」
と説明している。
「ウィットに富んだ絵」「ユーモアのかけらも無い」
吉田さんは13日、ツイッターにも同じ作品画像を投稿。こちらでは「あえて、解説は載せません」として説明を避けたが、個人サイトと同じく、安倍首相に対する批判意識があることは明らかだ。
ツイートは注目を集め、
「なるほど晋ゴジラか。言い得て妙」
「ウィットに富んだ絵ですね。素晴らしい」
「核を欲して民主主義と平和を破壊するゴジラか」
といった称賛や同意のコメントが寄せられたが、一方では
「作品の『話題性』だけに憑依して自身のプロパガンダに利用しただけ」
「政治的な2次利用は制作者の意図ではないはずです 即刻、やめてほしい」
「ユーモアのかけらも無く、風刺画としては稚拙そのもの」
といったネガティブなコメントも少なくなかった。著作権上の問題を指摘する声も目立った。
吉田さんは批判的なリプライ(返信)を飛ばした何人かのユーザーを「ブロック」したものの、直接的な反応は示していない。そこでJ-CASTニュースは17日、吉田さんに取材した。
吉田さん「表現の自由の範囲内だと思っている」
まず「著作権問題」や「政治的意味合いを持たせた二次利用」への批判について、見解を尋ねると、
「この絵で、お金儲けをしているわけではなく、自分の表現をしたということで、それぞれの映画の作品の責任者の方から、直接お話があれば、逃げも隠れもしません。三作品とも、素晴らしい、大好きな作品です」
と答えた。ニュース油絵シリーズは、今作に限らず販売を行っていない。
そして吉田さんは「表現の自由の範囲内だと思っております」とし、
「ネトウヨの人たちは、歴史を学んで下さい。戦時中、簡単に、他人を非国民呼ばわりした人と同じことをやっているわけです。あなたがたも、僕と同じ扱いを、国から受けるだけ。何ら優遇されませんよ。一切、見返りを期待し無い方がいいですよ」
とコメントした。