トランプ次期米大統領による当選後初の記者会見を受け、日本では「メディアの偏向報道」に対する議論が熱を帯びている。
前大阪市長の橋下徹氏は、トランプ氏の「質問拒否」やSNS発信が一方的と批判されていることについて、「メディアの発信も一方的だった。そこに有権者が疑問を持ち始めている」と指摘した。
日本の新聞見出しも「不寛容なトランプ氏」
会見は2017年1月11日(日本時間12日未明)に開かれた。ハイライトと言えば、米CNN記者との激しい応酬だろう。質問しようとしたCNN記者を指さして、「おたくの会社はひどい」「おたくはウソニュース」などと言い放ち、質問を退けた。
CNNは前日、ロシアの情報機関がトランプ氏に関する不都合な情報を握ったと主張していると報じていた。会見での質問拒否は、この報道に対する「お返し」だったようだ。また、CNNの報道後に同件に関連する文書を公表していた米バズフィードに対しても、会見中に「落第点のゴミの山」と罵倒した。
このロシアをめぐる報道については、日頃から精力的に更新しているツイッターでも反応している。10日夜、具体的なメディア名こそ挙げなかったものの、「ウソニュース。完全な政治的魔女狩りだ」として報道内容を完全否定していた。
トランプ氏のこうした質問拒否によるメディア選別や、ツイッターをはじめとするSNSでの情報発信について、多くのメディアは批判的だ。
日本でもネガティブな報道が目立つ。例えば13日の朝日新聞の見出しは「不寛容なトランプ氏会見 都合悪い記事は『偽ニュース』」。日経新聞の見出しは「トランプ氏、メディア批判 不寛容さ、あらわに」だった(いずれもデジタル版)。SNS発信についても以前から「一方的」といった枕詞を付けて報じるケースが多い。
橋下徹氏、「会見の答えはメディアの都合よく報道される」
日本のネット上でもこうしたメディアの論調に同意する意見は少なくないが、翻って、報じる側のメディアからも「不寛容」で「一方的」な姿勢が見て取れるとする意見が上がり、議論がなされている。
そうした中、橋下徹氏は13日に自身のツイッターで「政治家は腹が立ってもケンカしてでもメディアからの質問は受けて答えるべき」とトランプ氏の質問拒否に異論を唱えた。しかしその上で、メディアも反省すべきだと説く。
「SNSが政治家の一方的発信で危険としているがメディアの発信も一方的だった。そこに有権者が疑問を持ち始めている」
橋下氏は、政治家は会見でどれだけ答えても「編集されてメディアの都合よく報道される」と指摘。また「メディアは気に入らない奴の主張は載せない。自分たちに立てつかない識者の主張ばかり載せる」とも綴り、そうした状況を変えるのが「政治家自らの発信」だと主張する。
「政治家がSNSを使うことは民主政治にとってはより有権者のためになる。メディアの方が発信力は圧倒的に高いのだからメディアは政治家のSNSに徹底批判を加えればいい。最後は有権者が判断する。メディアの一方的発信よりよほど健全だ」
とSNS発信の利点を綴り、
「メディアが政治家のSNSに負けるなら、それはメディアの力不足。メディアは自分たちの主張こそが絶対的に正しいという驕りを捨てなければならない」
と持論を展開した。