米国のドナルド・トランプ次期大統領が2017年1月11日（米東部時間、日本時間12日未明）、16年秋の大統領当選から初めて記者会見を開いた。トランプ氏は大統領選でのサイバー攻撃にロシアが関与したとの見方を示したほか、雇用創出や貿易不均衡の是正を訴えた。
最も「大荒れ」だったのが、ロシアの情報機関がトランプ氏に関する情報をつかんでいたと報じられたことをめぐる応酬だ。この「情報」にはトランプ氏の「倒錯した性的行動」も含まれていると指摘された。トランプ氏は事実関係を否定した上で、このニュースを報じなかったメディアに「感謝」する一方で、報じた社については「ゴミ」「ウソニュース」などと罵倒の限りを尽くした。
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トランプ氏はツイッターで「ウソニュース。完全な政治的魔女狩りだ」と報道内容に反論した
バズフィードは報告書35ページのほぼ全文を公開
このニュースは1月10日夜（米東部時間）、CNNが最初に報じた。大統領選へのロシアによる干渉について米政府がまとめた機密資料に、ロシアの情報機関がトランプ氏の「個人情報や財務情報」をつかんでいるという内容が含まれている、という内容だ。資料のうち、トランプ氏に関する部分は2ページにまとめられていた。この機密資料は、中央情報局（CIA）や連邦捜査局（FBI）がオバマ大統領やトランプ氏に説明したという。CNNによると、この2ページの資料は、元々は35ページある報告書からまとめられていたが、この時点では報告書の内容そのものは報じていなかった。
バズフィードは、2月11日、
「英国の情報機関高官だったとする人物が作成した文書では、ロシアがトランプ氏に関する情報を漏らしていた、としている。この主張は確認されておらず、報告書には誤りが含まれている」
と断りながら、一部黒塗りがあるものの、35ページのほぼ全文を公開した。報告書は、「共和党候補のドナルド・トランプ氏のロシアにおける活動とクレムリン（編注：ロシア政府）との恥ずべき関係」と題したもので、「概要」では
「ロシア政府は少なくとも5年間にわたってトランプ氏を支援している。これはプーチン大統領も承認しており、西側の同盟関係の分断を促すことが目的だ」
と指摘。
その「支援」の中でロシア連邦保安庁（FSB）がトランプ氏の活動に関する情報を得たといい、
「複数の内部情報に詳しい情報源によると、彼（トランプ氏）のモスクワでの行動は、FSBが仕切り、監視している、倒錯した性的行動も含まれている」
とも指摘している。なお、FSBの前身はソ連国家保安委員会（KGB）であることが知られている。
「倒錯した性的行動」の内容が詳しく描写
報告書では、この「倒錯した性的行動」の内容が詳しく描写されている。ほんの一例が以下のような具合だ。
「現場にいたという情報源Dによると、トランプ氏の（倒錯した）モスクワでの行動には、（自分が嫌いな）オバマ大統領夫妻がロシアへの公式訪問で滞在したと知っているリッツ・カールトンホテルのプレジデンシャル・スイートを借り上げ、多数の売春婦を雇って自分の目の前で『ゴールデン・シャワー』（排尿）ショーをさせ、ベッドを汚したことも含まれる。このホテルは、FSBの管理下にあり、主要な部屋すべてにマイクと隠しカメラが仕掛けられており、FSBの好きなように何でも記録できることが知られている」
トランプ氏が脅迫まがいのことをしていたという指摘もある。
「現地（編注：サンクトペテルブルグ）のサービス業の情報源によると、トランプ氏は同市でのセックスパーディーにも参加していたが、この件の直接的な目撃者は最近になって全員が『沈黙させられた』。つまり、わいろを受け取ったか消されたかだ」
ロシア当局は「トランプ氏を脅迫するに十分な恥ずべき材料」
報告書では
「情報源B（かつてのロシア情報機関のトップレベルの高官）は、トランプ氏のここ数年のロシアでの型破りな行動は、当局が望めばトランプ氏を脅迫するに十分な恥ずべき材料を与えた、と主張した」
という記述もあり、トランプ氏がロシアに弱みを握られているとの見方を示している。
大統領報道官への就任が決まっているショーン・スパイサー氏は、トランプ氏の会見に先立って、CNNとバズフィードを名指しして
「クリックを得るための、悲しく哀れな企て」
だと非難。トランプ氏も
「ウソニュース。完全な政治的魔女狩りだ」
とツイートしたのに続いて、会見ではバズフィードのことを「落第点のゴミの山」と罵倒。CNNの記者は
「私たちを攻撃するのなら、（質問する）チャンスをくれないか」
と挙手したが、トランプ氏は
「おたくの会社はひどい」
「おたくはウソニュース」
などと罵り、他の記者を指名。CNNの質問は受けなかった。一方で、トランプ氏の表現を借りると、「おそらく情報機関が流したナンセンス（な情報）」を報道しなかった社については「感謝」し、「報道の自由を尊重する」と述べた。
菅義偉官房長官は2月12日午前の会見で、トランプ氏の会見について、
「トランプ次期大統領はまだ就任しておらず、記者会見での発言について政府としてコメントすることは控えたい。もちろん会見は聞いて、しっかりと分析もしている」
と述べるにとどめた。