トヨタはトランプに屈したのか 米国に5年で1兆円投資の異例

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   メキシコに新たな工場の建設を計画しているとして、米国のドナルド・トランプ次期大統領に「標的」にされたトヨタ自動車の豊田章男社長が2017年1月9日(日本時間10日)、米国で今後5年間に100億ドル(1兆円超)を投資する計画を明らかにした。

   米デトロイトで開かれている「2017北米国際自動車ショー」で語った。トランプ氏は自国の利益を最大限に追求する「米国ファースト」を打ち出しており、雇用拡大などを理由に、メキシコに新工場建設を計画していたフォード・モーターや、すでに生産しているゼネラル・モーターズ(GM)とともに、トヨタを名指しで「批判」していた。

  • トヨタ、米国で「5年で1兆円超投資」の異例
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メキシコの新工場は計画どおり進める

   2017年1月9日(日本時間10日)、米デトロイトで「2017北米国際自動車ショー」が開幕。同日昼、トヨタ自動車の豊田章男社長は、米国で生産する主力セダンで8代目となる「新型カムリ」の発表イベントに登場した。

   豊田社長が、トランプ氏のツイッターでの批判後に記者らの前に姿を見せたのは、この日が初めて。発表イベントで、豊田社長はトヨタが米国で13万6000人を雇用していることや、これまでの60年間で220億ドル(2兆5000億円超)を投資してきたことを強調したうえで、「今後わずか5年間でさらに100億ドル(1兆円超)を投じる」計画を明らかにした。「1兆円超」の投資を公言したのは初めて。

   ただ、具体的な雇用計画などにはふれていない。また、トランプ氏が1月5日付のツイッターで批判した、メキシコ・Baja(バハ)に建設予定の米国向け「カローラ」を製造する新工場については、計画どおり進める意向を示している。

   トヨタは今回の計画とトランプ氏のツイッターとの関係については明らかにしていないが、タイミング的にはトランプ氏の発言にトヨタ側が反応したと受け止められている。豊田社長の発言を受けて、10日のトヨタ株は、午前こそ6日終値と比べてやや上向いて推移したものの、終値は69円安の6861円に引けた。

   「カムリ」は、1982年に日本で発売して以来、「トヨタのグローバルミッドサイズセダン」として、10か所の工場で生産。100以上の国・地域で販売されていて、累計販売台数は1800万台を越える。トヨタによると、米国では自動車ウェブサイト「Cars.com」で、「あらゆるメーカーが生産するあらゆるクルマの中で『最もアメリカンなクルマ』」と評価されているクルマで、米ケンタッキー州の工場で年間40万台近く、「約1分に1台を生産している」(豊田社長)という。

   新たに米国で投資する「1兆円超」は、この新型カムリなどに導入されるトヨタの新しい開発・設計手法で、「もっといいクルマづくり」に向けた「Toyota New Global Architecture」(TNGA)による構造改革を推し進めるために役立てるほか、現行の生産ラインの競争力強化を図る。

   さらに現在、米国・西海岸、中部、東海岸の3か所に分かれている北米の本部機能を、テキサスの新本社に集約するためのコストや、人工知能(AI)と自動運転などの研究開発への投資に充てる。

フォードもフィアット・クライスラーもひれ伏す

   一方、米国のドナルド・トランプ次期大統領は2017年1月9日(日本時間10日)、欧州の自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、8日に米国工場の生産力拡大に、約2000人の追加雇用と約10億ドル(1000億円超)を投じると発表したことについて、ツイッターに「ついに(求めていたことが)実現した」と投稿。米自動車大手のフォード・モーターが1月3日にメキシコでの新工場建設を撤回すると発表したことにもふれ、「ありがとう、フォードとフィアット・クライスラー!」と、謝意を綴った。ただ、トヨタの1兆円投資には反応していない。

   日米の自動車大手がトランプ氏に名指しで批判された状況から、フィアット・クライスラーは、その前に「先手」を打ったとみられるほか、北米国際自動車ショーでは、フォード・モーターが2020年からミシガン州の工場で中型SUVを生産開始することも発表した。

   微妙な立場なのが、ゼネラル・モーターズ(GM)。トランプ氏はGMの「シボレー・クルーズ」をめぐるメキシコ投資も批判しており、4日には「これで終わりではない」と介入を続ける意向を示していた。

   GMはメキシコでの生産計画の変更を否定しているが、トランプ氏のツイッター「口撃」に、日米欧の自動車大手が次々となびいており、今のところ、トランプ氏の思惑どおりの展開になっているようだ。

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