停滞ぎみの首都圏マンションの建設が、再び増勢に転じる。不動産経済研究所の2017年の予測では、3年ぶりに供給が増えるという。
その一方で、懸念されているのがマンション空き家率の上昇だ。すでに、東京・霞が関や大手町、新宿といったビジネス街までの通勤に1時間とかからない、世田谷区のマンションの空き家率が12.8%に上っているという、衝撃的な調査結果もある。
2017年の首都圏マンション供給数は3万8000戸
不動産経済研究所は2016年12月21日、首都圏における2017年のマンション市場(供給)予測を発表した。16年の首都圏マンションの供給数は、前年比11.7%減の3万5700戸の見込み。それが2017年の供給は、前年比6.4%増の3万8000戸を予測。2013年以来4年ぶりの増加となる。
東京都区部は、16年と比べて5.1%増の1万6500戸。都心や湾岸での供給が増えるが、増加幅は1ケタと緩やか。その一方で郊外での供給が目立つようになり、千葉県が14.3%増の4000戸、埼玉県が12.5%増の4500戸と2ケタ増の見込み。神奈川県も5.9%増の9000戸と、市場の回復を予測している。
2016年(1~11月)の東京都区部の1戸(100平米)あたりの平均価格は6667万円。前年同期比で1.0%減った。
不動産経済研究所・主任研究員の松田忠司氏は、「この3年間、上昇し続けていた販売価格が、2016年はようやく止まりました。建築コストはやや下落。2017年は、これまで大手ディベロッパーなどが手控えて、後ろにずれていた物件が投入されること、また大型物件の発売が決まっていることなどから、供給増を見込んでいます」と説明する。
ただ、東京都区部では建設用地の取得が難しくなってきており、供給はひと息つきそう。今後は、都区部近郊の大型案件と郊外の駅近物件が市場をけん引。まだまだ、マンションの建設ラッシュは続きそうだ。
世田谷は江東の4倍の空き家率
再び、マンションの建設ラッシュが起こりそうななか、2016年は「マンション空き家」問題がクローズアップされた1年でもある。
ニッセイ基礎研究所・金融研究部不動産市場調査室の竹内一雅室長が2016年10月27日に公表したレポート「図解 あなたの隣の家、実は空き家かも? ‐都市別・エリア別に空き家率を見える化してみた‐」によると、都区部で最もマンションの空き家率が低いのが江東区の3.3%。最も高いのが世田谷区の12.8%だった。
世田谷区といえば、成城や深沢といった高級住宅地のイメージがあるが、マンションの空き家率では、湾岸エリアのタワーマンションがそびえる江東区よりも約4倍もの差がある。世田谷区の空き家率が高いのはなぜか――。2016年12月27日、J‐CASTニュースの取材に、竹内氏はこう説明した。
「通勤への利便性が高い世田谷区には早くからマンション(賃貸を含む)が建ちはじめました。それに伴い、人口も増えてきました。ここ数年、建設ラッシュが続いているのは山手線内の都心部です。じつは(世田谷区は)バス便の利用が多いエリアであること、また中古マンションが多いことがあります。それらが影響しているのかもしれません」
また、世田谷区に次いで空き家率が高いのは、港区。千代田区や中央区、新宿区、文京区などが続く。「職住近接」と利便性もよく、ハイソサエティーなイメージがある都心部でも空き家率は高いようだ。
竹内氏は、「都心部が高いのは、供給戸数がどんどん増えているためとみられます。じつは、都区部の持家マンションの空き家率の高さは、必ずしも人口増加率とは関係がありません」と説明する。
一方、目黒区や豊島区、練馬区、葛飾区などは、マンション空き家率が低いほう。「人口増加率の低い区の中には、住宅建設が活発に進まないため、空き家率がさほど上がらない区があるようです」という。
とはいえ、空き家の増加は、その地域の住宅地の不動産評価に悪影響を及ぼし、ひいては個人の住宅の資産価値にも影響する。
竹内氏は、「調査の数字はあくまで2013年のもの。都心の空き家率は需給関係によっても大きく変わってきますが、団塊世代が75歳以上を迎える2025年問題のときにはさらに多くの空き家が出てくることは必至です」と話している。