エイベックス・グループ・ホールディングスの松浦勝人代表取締役社長が、三田労働基準監督署から受けた長時間労働と残業代未払いなどに対する是正勧告に対して、自身のブログ「仕事は仕事で遊びは遊び」で反論したところ、ミュージシャンも巻き込んだ賛否両論が巻き起こる事態となっている。
電通の新入社員の高橋まつりさん(当時24)が過労で自殺した命日の2016年12月25日に、母親が手記を公開するなど、長時間労働への関心が高まっていることもあり、ツイッターでは厳しい批判も続いている。
「好きで仕事をやっている人は遊びとの境目ない」
松浦氏は、12月22日に公開された、「労働基準法 是正勧告とは」という記事の中で、「好きで働いていても法律で決められた時間しか働けなくなる可能性があるようだ」、「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」と、業界の事情を無視した労基署の勧告へ反論。それに対してネットでは賛否両論が巻き起こっている。
松浦氏は、勧告を「真摯に受け止め対応はしている」と述べつつ、
「好きで仕事をやっている人に対しての労働時間だけの抑制は絶対に望まない。好きで仕事をやっている人は仕事と遊びの境目なんてない。僕らの業界はそういう人の「夢中」から世の中を感動させるものが生まれる。それを否定して欲しくない。」
と自身の意見を語り、エンターテイメント業界の働き方の特殊性を強調した。
さらに、
「だから時代に合わない労基法なんて早く改正してほしいし、そもそも今のキャンペーンは労基法の是正が遅れているにも関わらず、とりあえず場当たり的にやっつけちまえ的な不公平な是正勧告に見えてならない。」
と続け、現行の労働基準法への疑問を投げかけた。
また、結果的に長時間労働となることへの対策として、社内への病院設置やメンタルチェックなど、様々な施策を行ってきたことを語り、「でも法律に違反していると言われればそれまで。僕らのやってきた事おかまいなしに一気にブラック企業扱いだ」と、不公平感を募らせた。
TERU「労基法のままならコンサートできるはずもなく...」
松浦氏のブログに対するコメントの中では、
「同感です!最近の労働基準監督署の取り締まりは全く時代に合っていない。こういう状態だから外資にどんどん攻められ日本の国力が落ちていくんですよ」
「本当に法律は実態に合っていないと思います。ホワイトカラーの仕事は労働時間には馴染みにくいと思います。今は頑張って働くのがいけないみたいな風潮。人それぞれ価値観があって働くのが好きな人もいるし、休みたくない人もいます」
「好きで時間外に仕事をしている人でさえ、違法だとされてしまうのはおかしい。したくもない労働を強いられている人たちがいる企業に是正勧告すべきです。はやく労基が変わりますように」
など、賛成する意見が少なくない。
さらに、GLAYのボーカリストTERUさんはツイッターで、ミュージシャンの立場から、
「全くその通りだと思います。レコーディングやコンサート事業もそうですが、基準以内での運営は皆無。」
「仕事の内容によって適応する制度になれば良いんですが、そうなると線引きが難しい。今は大手企業が槍玉にがげられてますが、僕らの会社も労働基準法のまま仕事をするとなるとコンサートなんてできるはずもなく・・・。難しい問題ですね。」(原文ママ))
とコメントし、松浦氏の意見への理解を示した。
「多くの従業員を抱える経営者は言ってはならない」
しかし、ツイッターなどでは、松浦氏への批判的なコメントが目立つ。ブログで意見を述べた翌日から、
「報道されている「残業代を適正に払っていない」「長時間労働をさせている」「実労働時間を管理していない」に対する答えにまったくなっていない。」
「これを社長じゃなく周りの社員が言ってるなら素晴らしい会社だと思うけど(苦笑)」
といった批判的なコメントが相次ぎ、24日にも
「avexの松浦さんの話正論だし特にアート系IT系は寝ても覚めても好きでやってる人はいるけど、雇用者がそれ言った瞬間に終わり。資本主義上で『それ』をやりたいなら労働と対価の概念を作ってそれで生活が成り立つように業界を作るのが経営者の仕事」
という意見が寄せられた。
また、電通の新入社員の高橋まつりさんの自殺からちょうど一周忌にあたる25日、高橋さんの母親が「人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません」という手記を公開したことが報じられると、
「1人で活動するフリーランスならともかく多くの従業員を抱える経営者は言ってはならないでしょ。」
などと、あらためて松浦氏への批判的な意見が多く投稿されている。
松浦氏は25日17時現在、この問題についてブログ上で新たな意見を投稿していない。