民進党の蓮舫代表が国会での党首討論で安倍晋三首相を糾弾するのに、「息をするように嘘をつく」という言葉を持ち出し、ネット上で大きな話題になっている。辞書などにも用例として載っていることが少ないこの言葉、いつから使われ出したのか。
「なぜカジノ解禁なんでしょうか?」「なぜ強行採決に踏み切ったのか?」。蓮舫氏が代表になって初めてとなる2016年12月7日の党首討論では、まずカジノを盛り込んだ議員立法の統合型リゾート推進法案が議論になった。
「強行採決」めぐり、安倍首相に言い切る
蓮舫氏は、ギャンブル依存症の疑いがある患者が厚労省の推計で536万人に上ることを挙げ、安倍首相側が暴走していると批判した。
これに対し、安倍首相は、依存症の懸念があるのは事実であり対策も必要だとしながらも、今回のリゾートでは、カジノは床面積の3%に過ぎず、ホテルや劇場、ショッピングセンターなどが入り、外国人観光客にも楽しんでもらえるとその意義を強調した。
しかし、蓮舫氏は、カジノがなぜ成長産業につながるのか分からないとし、「総理のその答えない力、逃げる力、ごまかす力、まさに神っています」と16年の流行語大賞を引き合いに出してさらに批判した。そして、討論の最後では、「強行採決をしたことがない?」と安倍首相を揶揄したうえで、「よく、息をするように嘘をつく」と言い切った。
すると、安倍首相は笑って、だれかに話しかけるような仕草をした。蓮舫氏は、安倍首相が嘘をついたケースとして、「TPP、年金カット法案、カジノ、全部強行採決」だと主張した。
「息をするように嘘をつく」という言葉は、広辞苑などを調べても出てこない。はっきりしないものの、10年ほど前からネット掲示板などで書き込まれていることが分かっている。
約10年前にネット掲示板から発生、安倍首相も民主党批判に使う
ネット掲示板などを見ると、そのころは、主に韓国や韓国人を指して使われていたらしい。それが、2012年8月に韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が日本の竹島に上陸して、日韓関係が悪化したころから、掲示板に相次いで書き込まれるようになったようだ。
「息を吐くように嘘を吐く」などいくつかの類似表現があり、14年10月には、「息をするように嘘をつく韓国」というタイトルの本も出版されている。
そんな中で、安倍首相が13年6月、フェイスブックで「『民主党は息を吐く様に嘘をつく』との批評が聞こえて来そうです」と発言して話題になった。当時の細野豪志幹事長からツイッターで「民間人への批判は自制すべきだ」と批判されたことに応戦したときの言葉だ。
民主党出身の蓮舫氏は、この言葉をそっくり返した形になるのかもしれない。
しかし、蓮舫氏は、台湾籍との「二重国籍問題」で、発言が二転三転したことが批判されている経緯がある。
前大阪市長の橋下徹氏は、16年12月7日のツイートで、「人を嘘つき呼ばわりしたら、蓮舫さんなんか二重国籍問題ではバリバリの嘘つきだ」と指摘し、「人格攻撃はよくないよ」「政策論争に徹すべき」と発言を戒めている。
ニュースのコメント欄などでも、「その言葉、すべて自分自身に一番当てはまると思いますが」「お得意のブーメラン」「安倍総理が笑ってしまうのも仕方ない」といった声が支持を集めていた。