全国各地の児童養護施設や学校に、「伊達直人」の名前でランドセルや筆記用具などのプレゼントを届ける「タイガーマスク運動」。その先駆けとして活動した男性が2016年12月7日、初めて本名と素顔を公開した。
東京・後楽園ホール(文京区)で行われた、実在のプロレスラー「初代タイガーマスク」の35周年記念イベント。満員の会場に響いた「伊達直人!伊達直人!」という歓声とともに登場したのは、漫画『タイガーマスク』の主人公・伊達直人を名乗る寄付運動を世に広めた、河村正剛さん(43)だった。
ランドセル配った「伊達直人」は前橋の会社員43歳
「初代タイガーマスク」ことプロレスラーの佐山聡さん(59)とともにリングの中央に立った河村さんは、自身の行動がきっかけとなって全国に広まった「タイガーマスク運動」への思いを熱く語った。
10年以上前から児童養護施設への支援を続けていたという河村さんは、前橋市在住の会社員。だが、施設を利用する子供たちの数が年々増えていくにつれ、「世の中がこのままじゃだめだ、世の中を何とかしたい、世の中にメッセージを送りたい」と考えるようになったという。その上で、
「世間にメッセージを届けるにあたり、ある人に協力して頂こうと考えました。それは・・・、タイガーマスクの伊達直人です」
と話した。続けて、「子供たちは泣くために生まれてきたんじゃない、抱きしめられるために生まれてきたんです。こうした思いを胸に、僕はこれからも活動を続けていきたいと思います」と宣言した。
こうした河村さんの児童支援に関する熱いメッセージには、会場に集まった大勢のプロレスファンから大きな拍手と歓声が上がった。
そもそも、「タイガーマスク運動」は2010年12月25日のクリスマスの朝、河村さんが群馬の児童相談所にランドセル10個を届けたことで始まった。
贈り物には、「子供たちのために使ってください」と書かれた手紙が添えられていたという。このプレゼントが大きな話題を呼び、児童施設などに匿名で寄付を行う動きが全国に広まり、自然と「タイガーマスク運動」と呼ばれるようになった。
「子供たちの未来なら変えられる」
今回のイベント後、リングを降りた後に報道陣からの取材に応じた河村さんは、児童支援をはじめた理由について、
「私自身、家庭に恵まれなかった事実があります。その中で、自分の過去は変えられないが、子供たちの未来なら変えられると考えるようになり、支援活動を行うようになりました」
と話す。続けて、伊達直人の名前を用いて匿名で寄付を行ったことについては、
「第三者が匿名で寄付を行うことで、世間から児童養護施設の問題に関心が集まれば、と考えました。また、実際に子供を施設に預けている親御さんにメッセージを投げかけたいという思いもありました」
と説明。また、プレゼントの贈り主の名前として「伊達直人」を選んだ理由については、「漫画のストーリーの中で共感する部分があり、自然と伊達直人の名前を使おうと思った」と話していた。
現在、河村さんは、活動を通じて知り合った佐山さんと一緒に、施設で過ごす子供を支援するNPO法人「初代タイガーマスク基金」の活動に参加しているという。今回、実名と素顔を公表した意図については、
「自分が出て世間の注目を集めることで、施設で育った子供たちの支援の重要性を改めて伝えたかった。今まで広まった個人の寄付活動だけでなく、企業や行政レベルでの支援に繋がればと考えました」
と話していた。