総務省は早ければ2017年1月にも、利用客の苦情が多い携帯電話販売店の「覆面調査」を始める。
携帯電話の新規契約時に、その内容を十分に説明しなかったり、契約を断ったのに強引に手続きを進められたりするなど、消費者と携帯電話ショップとのトラブルが後を絶たないなか、悪質なショップを取り締り、消費者保護を強化する狙いがある。
総務省「定期調査の一つの方法として実施」
「ガラケーの機種変更を依頼したら、必要ないスマホをしつこく勧められた」
「携帯電話を新規で契約したところ、身に覚えのない付属品を購入したことにされていた」
「電話をいくらかけても料金は無料という説明を受けて契約したのに、一部対象外の番号があるらしく、後日、通話料を請求された」
「多額のキャッシュバックがもらえるというので契約したが、多数のオプションに一定期間加入することが条件になっていることがわかった」
これらは携帯電話ショップへの苦情や相談として、総務省の電気通信消費者相談センターなどに寄せられた声だ。
総務省によると、携帯電話ショップでの契約をめぐるトラブルは年々増えているという。電気通信消費者相談センターなどに寄せられた「電気通信サービスに関する利用者からの苦情や相談」は、2015年度に全体で1万124件にのぼり、前年度と比べて45.6%も増えた。このうち、「販売勧誘・契約時の説明に関するもの」は15年度に1378件で、前年度比57.3%と急増している。
また、国民生活センターに寄せられていた携帯電話ショップのトラブルは、15年度に2万504件。前年度比9.9%増えた。「普及率が高まり、高齢者の利用が広がったことでトラブルが増えたとみられます」と話す。
苦情や相談の内容は、契約時や解約時の説明不足やしつこいセールスのほか、高額なパケット料金の請求、携帯電話端末の操作性や故障など多岐にわたる。
こうした事態に、総務省が「覆面調査」に乗り出す。携帯電話の販売をめぐる苦情に、強い姿勢で対策に臨む。16年11月29日のJ‐CASTニュースの取材に、総務省は「委託先を含め、調査方法などの詳細はまだ決まっていませんが、定期調査の一つの方法として実施していきたいと考えています」と話す。
「指導とか勧告じゃなく営業停止ぐらいやってくれよ」
来店客を装った調査員が、販売店で携帯電話の契約手続きを進め、店員の説明の仕方や提示する書類をチェック。具体的には、強引な契約の勧誘や虚偽の説明、また契約者が希望しない追加のオプション契約を付与したり、利用料を上乗せしたりするなどの事例がないかを調べる。高齢者らに契約内容を丁寧に説明しているかも確認する。不適切な事例があれば、総務省が是正を促す。
これに対して、携帯電話ショップなどを組織している全国携帯電話販売代理店協会(全携協、会員数133社)は、「日頃から混雑でお客様にはご迷惑をおかけしていますので、結果的に覆面調査が接客中のお客様や販売店の負荷の増加に繋がらないよう配慮をいただきたいと、販売店として要望をお伝えしたいと考えています」と話している。
携帯電話ショップに対して、総務省が「覆面調査」に乗り出すことにインターネットでは、
「遅すぎるくらい。なにをいまさら...」
「タブレット端末とかもちゃんと監視しろよ。まだ使いもしない老人に買わせようとしてんだから」
「田舎のショップとか苦情多そう。年寄りに無料無料って、メチャクチャやってるぞw」
「タブレットを無料でくれるとしつこかったな」
「こういうのって販売店だろw 最近は0円で売れなくなったから販売奨励金も出ないし、ジリ貧なんだろ。そりゃ強引にでも契約させるわなwww」
「指導とか勧告じゃなく営業停止ぐらいやってくれよ」
などと、携帯電話ショップへの不満が噴き出している。
「あんしんショップ認定制度」を導入
そうしたなか、全携協も全国の8400店(2016年9月末時点)のキャリアショップを対象に、「あんしんショップ認定制度」を導入。消費者に安心して契約や相談できる体制を整えている。17年1月から、店頭にわかりやすく、鳩をモチーフにした認定マークと「お客様への誓い」を掲出する。
認定の有効期間は1年間で、更新が必要。また認定後に不適格と判断されたショップは認定を取り消す場合があるという。審査委員会には、総務省もオブザーバーに加わっている。
16年11月29日には、「あんしんショップ」が17年1月1日のスタート時点で、キャリアショップの半数以上にあたる4290店に認定される見通しになったと発表。当初の予想を上回る申請があり、「あんしんショップ」の認定を受けたショップはキャリア別に、NTTドコモが1553店、ソフトバンクが1162店、auが1148店、Y!mobileが427店(11月24日時点)となった。
なかなか減らない契約時のトラブルについて、全携協は「各種セミナー開催や、消費者活動や地域活動との連携などの取り組みを深めていますが、今後さらに契約に不慣れなお客様の増加に対する接客力の強化や複雑化する端末やサービスの整理などが必要と思われます。特効薬は見つかっていませんが、業界全体でトラブルを減らす努力を継続していきます」としている。