「ゼロ円スマホ」の是正をめぐり、総務省がスマートフォンをめぐるガイドライン(指針)の改正案を発表した。新型スマホが行き過ぎた値引き競争で「実質ゼロ円」で販売されることがないよう「2年前の同型機種の下取り価格以上」で販売するよう求める内容だ。
この結果、端末の購入価格は現在より高くなる可能性があるが、総務省は「通信料金は値下げとなり、利用者にはメリットが大きい」と説明している。スマホの端末購入代金が上がっても、本当に通信料金が下がるのか。行政指導の真価が問われそうだ。
「2年前の同型機種の下取り価格以上」に
総務省の発表があったのは2016年11月18日。最新スマホの端末が実質ゼロ円で販売されるのは、長期利用者の通信料金が値引きの原資になっているためだ。日本の携帯電話の通信料金が国際的にも高い要因になっていると、これまで指摘されてきた。頻繁に最新スマホに買い替える若手ユーザーにはメリットがあるが、ガラケーを長期利用する中高年らのユーザーに負担がかかるため、不公平感が指摘されてきた。
総務省は3月に実質ゼロ円で販売しないよう指針を定めたが、大手3社の値引き競争は改まらず、4月に行政指導、10月に行政処分を行った経緯がある。
総務省は4月以降、最新スマホを「少なくとも1万円程度以上」で販売すれば、実質ゼロ円とはみなさない運用を続けてきた。今回の指針の改正で、「2年前の同型機種の下取り価格以上」となると、実質的な端末代金の負担はどうなるのか。
「SIMロック」解除までの期間を短縮するよう要求
2年前に発売したアップルのiPhoneの場合、現在の店頭での下取り価格が2万円前後。このため、現状の「実質1万円程度の負担」と比べると負担額は倍増しそうだ。指針が「2年前の同型機種」を目安とする理由について、総務省は「契約者の多くは2年で割賦支払いを終え、買い替えるケースが多いためだ」という。
一方、指針の改正案は大手携帯会社が自社の回線以外で端末を使えなくする「SIMロック」について、ロック解除までの期間を短縮するよう求めている。割賦払いの場合は現行の6か月から100日程度以下に短縮。一括払いの場合は支払いを確認できた時点で解除するといった内容だ。いずれも各社間の料金プランの競争を促進し、携帯大手から格安スマホ会社など他社への乗り換えを促す狙いだ。
総務省は指針について12月19日まで意見公募を行い、2017年1月上旬までに改正する方針だ。果たして狙い通り、大手3社の通信料金を下げる効果があるのか、注目される。