いわゆる休眠預金法が成立すると、10年以上出入金のない「休眠預金」は、NPO法人などに回される――報道で一部、こう伝えられ、ネット上で「預金が没収されるのか」と不安の声が相次いでいる。しかし、金融庁では、実際はそういうことではないと説明している。
金融庁調査室によると、銀行などの金融機関では、毎年1000億円ほどの休眠預金が発生し、その後の払い戻しを除くと、500~600億円が銀行などの利益になっている。
休眠預金法案が成立見込みと一部報道
これに対し、NPO法人などからは、自らの社会貢献活動にこのお金を活用することを求める声が出ており、議員立法による法案も国会に提出されている。
共同通信の2016年11月16日付記事によると、この休眠預金法案が18日の衆院財務金融委員会で可決される見通しとなった。衆院通過後に参院に送られ、今臨時国会中に法案が成立する可能性が大きいという。成立すれば、NPO法人などに助成・融資され、民間の公益活動に活用されるとしている。
この報道を受けて、ネット上では、様々な意見が書き込まれており、2ちゃんねるでは、スレッドが次々に立つ祭り状態になっている。その多くは、10年放置しただけで自分の預金が没収されるのはおかしいという疑問や批判だ。
「ええっ!俺3つの銀行に1000万以上の口座あるけど全然、入出してないぞ」
「よく考えたら、郵便貯金も記憶が無いぐらい入出金してねーわwヤバ」
「怖い怖い 耐火金庫買うしかないな 10年ごときで没収とかびっくり」
こんな書き込みのほか、どんな支出に使うのかよく分からないNPO法人などにお金を回すのはよくないとの声も出ている。
預金が没収されるという不安について、金融庁の調査室では11月17日、「それは法案への誤解です」とJ-CASTニュースの取材に説明した。
金融庁「何年経っても払い戻しされる」
現行の制度では、10年以上入出金がなく、連絡も取れない預金口座について、郵送による通知を行って預金者の確認が取れなかった場合は銀行などの利益に計上される。その後も、預金者の求めがあれば何年経過しても銀行などが払い戻しに応じているが、今回の法案でも、同様に払い戻しされると調査室では言う。現行制度では、払い戻した分は、銀行などの損失に計上される。
今回は、銀行などの利益になるのではなく、休眠預金が銀行などから預金保険機構に送られ、社会貢献活動をする団体に納付される、というのが違いだというのだ。その団体にNPO法人も含まれるのかについては、まだ分かっていないという。
ちなみに、休眠預金としては、学生がアルバイト先で作った口座を放置していたり、家賃や授業料の振り替えで口座を作った後に引っ越してそのままお金が残っていたり、家族に知らせないで口座を作ったものの本人が亡くなってしまったり、といったケースがあるそうだ。