韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友の民間人女性、チェ・スンシル(崔順実)容疑者をめぐるスキャンダルで窮地に追い込まれる中、攻勢を強めているのが北朝鮮のメディアだ。
国営テレビでは女性アナウンサーが朴政権を「腐りきった汚物政権」呼ばわりし、朝鮮中央通信は「生ける屍同様の朴槿恵逆徒」と、独自の表現で批判を続けている。
テレビで「頭がおかしい女」「腐りきった汚物政権」
今回のスキャンダルは、韓国の中央日報系のテレビ・JTBCが2016年10月24日、チェ容疑者のPCにあったとされるファイルの内容を報じて本格的に発覚。それ以前の段階でも、北朝鮮メディアは朴大統領を「逆徒」と呼び続けてきたが、それがさらに苛烈になりつつある。
朝鮮中央テレビでは、11月1日に放送された時事解説の番組の中で、男性アナウンサーが朴大統領とチェ容疑者のことを
「2人の頭がおかしい女」
と表現。チェ容疑者については
「パククネに自分の夫まで差し出す人間以下のやつ」
とまでこき下ろした。別の日に放送された番組では、女性アナウンサーが、朴政権を
「腐りきった汚物政権」
「巨大なゴミ捨て場」
などと表現していた。
「支持率5%」を速報
朝鮮中央通信も、今回のスキャンダルを活発に報じている。朴大統領の支持率が歴代大統領最低の5%にまで落ちたというニュースは、調査結果発表が発表された11月4日中に速報。
「南朝鮮の各界が民衆総決起を控えて朴槿恵退陣のための組織的闘争を展開」(11月11日)
などと抗議デモの様子も伝えている。
特に際立つのが、11月12日に
「生き尽くした朴槿恵逆徒を相手にしては恥と汚名しか与えられない」
と題して配信した記事だ。北朝鮮外務省の軍縮・平和研究所研究者の声明を紹介するという体裁で、
「最悪の政治詐欺行為によって風前の灯火の境遇に瀕して今にでも政治的埋葬を避けられなくなった朴槿恵逆徒」
という長い枕詞で始まる。
「米国上司」は朴大統領を「苦いキュウリのように見ている」
それによると、朴大統領が
「外国の賓客を座らせて、誰それの未来がどうの、制裁圧力がどうのという妄言を並べ立てた」
ことを「間抜けなたわごと」だと非難。このことが具体的に何を指しているかは明らかではないが、朴槿恵大統領は11月10日にカザフスタンのナザルバエフ大統領と会談し、韓国とユーラシア経済連合(EEU)の自由貿易協定(FTA)交渉の早期開始で合意している。この会談の場で、北朝鮮問題も話題になった。北朝鮮側は、このことを念頭に置いている可能性もある。
今回のスキャンダルは「世界を驚愕させる特大型政治スキャンダル」で、
「南朝鮮人民に心から謝罪することのできる唯一の道は朴槿恵が今直ちに権力のポストから降りて罰を甘んじて受けることだけであると主張する民心をよそに回してみようとする逆徒の狡猾(こうかつ)な術策」
と非難し、矛先は韓国と協定を結ぶ相手国にも向けられた。
「これらの国が幾ばくかの金に誘惑されて、生ける屍同様の朴槿恵逆徒を訪ねて、彼女の妄言に相づちを打っていては恥だけをかくことになるであろう。今になっては米国上司も、生き尽くした朴槿恵逆徒を苦いキュウリのように見ている」