将棋の公式戦「叡王戦」(ドワンゴ主催)で、トップ棋士が対局に来ずに不戦敗となる珍事があった。その様子はニコニコ生放送で中継されたこともあって、ネット上で大きな話題になっている。
「今日は昼から実力者同士の一番」
「...さあ...始まる...」
「叡王戦が放送事故みたいになってる」
4強をかけた2016年10月30日の叡王戦は、棋王、王将のタイトル経験ある久保利明九段(41)と若手の豊島将之七段(26)の対決という将棋ファン注目の一戦だった。タイトル戦ではないが、優勝者は将棋ソフトの代表と戦うことになっている。
東京都渋谷区の将棋会館で行われたこの日の叡王戦は、ニコニコ生放送で中継された。しかし、予定時間の14時になっても、豊島七段だけが席についたままだ。豊島七段が久保九段の分まで将棋の駒を並べ始めると、ツイッターなどでは驚きの声が上がった。
「久保九段現れない・・・」
「豊島七段がポツンと座ってるのが なんとも切ないなぁ」
「叡王戦が放送事故みたいになってる」...
豊島七段は、正座して盤上をじっと見ていた。しかし、時々しびれを切らして、腰を少し上げたり、上を見上げたりする。こうした状況が延々と中継され続けた。
解説の中村太地六段が「これはなかなか見れない映像だと思います」「こんな光景はないですね」と話し、時間を使うためか中継中に久保九段が来るかどうかのアンケートも行われた。
アンケートでは、「来る」が56%、「来ない」が44%で、久保九段に来てほしいという声は多かった。しばらくして、久保九段は対局には間に合わないと連絡が来たことが中村六段から告げられた。すると今度は、「場所の間違いなのか、アクシデントか」「何かあったのかな、大丈夫かな」と事故などを心配する声がネット上で上がり、騒ぎはさらに拡大した。
「14時の対局を19時だと思っていた」
持ち時間の1時間が過ぎた15時、叡王戦は久保九段の不戦敗という結果になり、豊島七段が一礼して盤上の駒を片付けた。
豊島七段は続いて、視聴者に向かい、「対局を楽しみにされていた方がたくさんいらっしゃったと思うので、申し訳ない」と謝罪した。こうした対応に、ネット上では、豊島七段への好感度が高まったとする書き込みが相次いだ。
その後、久保九段もカメラの前に現れ、対局に間に合わなかったことに対し、唇を震わせながら「申し訳ありませんでした」と何度も繰り返した。
その理由について、「14時からの対局を19時だと思っていました」「すべて私の責任でありまして」と説明し、経緯を次のように語った。
「私、自宅が大阪なんですけれど、大阪からお昼ぐらいに出て、少しゆっくりして対局に臨もうと思っていたんですけども、最後に対局通知を確認しますと、14時からとなっていまして。それでもう慌てて出たんですけど、ちょっと空港の方に行ったんですけど、最善を尽くしたんですけれど、どうしても間に合わないという状況でした」
最後に、久保九段は「本当に取り戻すのは大変だと思いますが、少しずつ信頼を取り戻せるように対局を今後やっていきたいと思います」と反省の弁を述べた。
今回の件について、ネット上では、「事故とかじゃなくてよかった」「これからも応援してます」との激励のほか、「事前に確認しておかないとなぁ」「ちょっと気持ちが甘い」といった厳しい声も出ている。