「受賞するかって? もちろんさ(If I accept the prize? Of course.)」――ノーベル文学賞の発表から2週間あまり、ようやくボブ・ディランさんが、受賞の意向を明らかにした。
本人が沈黙を守ったことで、一時は「反権威のポリシーから、受賞を拒否するのでは」との見方もあっただけに、「失望した」などと言い出す人もある一方、「むしろボブ・ディランらしい」と肯定的な反応も少なくない。
授賞式は「できることなら」
ノーベル財団は2016年10月28日(現地時間)、選考を担当したスウェーデン・アカデミー事務局長と、ボブ・ディランさんの電話でのやり取りを公表した。冒頭に挙げたように、受賞を全面的に歓迎するとともに、「ノーベル賞の知らせに、言葉を失った」と、連絡を取らなかったことを釈明(?)する発言もあったという。
同じ日に発表された英紙デイリー・テレグラフのインタビューでも、今回の受賞についてコメントしており、授賞式への出席については、「もしできるなら(If it's at all possible.)」と含みを持たせた。
13日の受賞発表以来、この件について沈黙を守り、一時はノーベル財団も本人との連絡を諦めるなど、今回のノーベル賞をめぐる動きは国際的に注目を集めた。反戦、反権威的な歌詞で知られるボブ・ディランさんだけに、このまま受賞を拒否するのでは、との見方をする人も少なくなく、日本でも高須クリニックの高須克弥院長が18日、ツイッターで、
「反戦のシンボルだった歌手が爆弾製造会社創業者が作った賞を喜ぶわけがない。ビール会社かハンバーガー会社の賞なら受けとると思うけど......」
とつぶやいたのを始め、「ノーベルを蹴るボブディランがかっこいいぜ!」「かつて反権力・平和主義の先頭だった男の魂は老いてなお死んでいない」などなど、「受賞拒否」を前提に、ボブ・ディランさんを賞賛する声も少なくなかった。
むしろボブ・ディランらしい?
こうした人の中には、ノーベル賞受け入れを「変節」とみなして、失望する向きもあるようだ。上述の高須院長は29日、
「爆弾成金の賞を完全無視したら根性がある反戦の闘士だと尊敬したのに......普通の人に戻っちゃった。つまらん。ボケたか?」
と一転して非難のツイートを投稿した。ほかにも、「ボブディランにはがっかりだよ...ただのお爺ちゃんと化したな...」「所詮、権力と名誉には弱いのね。。」などといった反応が一定数見られる。
一方で、シンガー・ソングライターの佐藤龍一さんがツイッターで、
「ディランは受賞を辞退する、万が一受賞したら坊主になる、ノーベル財団はダイナマイト云々だからディランは受け取るわけないと断言していたみなさん、お元気ですか。あらゆる方向に期待を裏切る、そんなディランが俺は好き」
とつぶやいたのをはじめ、こうした態度こそむしろボブ・ディランさんらしい、と喜ぶ声も多い。
「『ボブディランは素直に権威を喜ぶような人間じゃない。長年のファンなら誰でも知ってる』とか言ってたコアなファン層に対して、満を持してはしごを外すボブディラン氏」
「ボブディランのノーベル賞にまつわる一連の発言が、『芸術とは~』『ロックとは~』とのたまう芸術評論家とロック評論家のメンツを潰して回ってるみたいで最高にロック」
なお、ボブ・ディランさんは2012年には米大統領自由勲章、13年にはレジオンドヌール勲章など、これまでも各種の栄典を受けている。