沖縄県の米軍北部訓練場(同県東村・国頭村)のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐる問題で、警備のため現地派遣されていた大阪府警の機動隊員が、抗議活動中の人々に「土人」と言い放った。
その様子を撮影した動画が動画サイトやSNS等で拡散され、「日本人として恥ずかしい」「然るべき処罰が必要」と非難の声が相次いでいる。政府も事態を重視して、官房長官が「不適切な発言」と認め、沖縄の2大県紙も最大級の批判を展開する今回の暴言、府警はどのように受け止めているのか。
はじめは丁寧なことばを使っていたが
沖縄県警によると、府警の機動隊員は2016年10月18日、東村の高江にあるN1地区(通称・Fルート)付近で抗議活動中の人々に「土人」と暴言を吐いた。「土人」は元来、土着の先住民を指す言葉ながら、現在はもっぱら未開で野蛮な人間を示す差別用語として使われる。県警の担当者は
「マスコミ取材で指摘され、実際に確認すると事実だと判明した。大阪府警にはすでに伝えた」
と経緯を説明する。大阪府警の担当者によると、この機動隊員の年齢は20代だという。
N1地区付近には現在、土砂運搬の妨害をはじめとした抗議活動を行う建設反対派が集まっている。
警視庁と各都道府県の機動隊員も現地派遣されており、ここ数か月間、反対派と警官がにらみ合う状況が続いている。「土人」は、そんな緊迫した状況下で飛び出した。
動画共有サイト「YouTube」に18日投稿された動画が、当時の状況を生々しく映し出す。
フェンスを揺らしたり、押したりして抗議する反対派に、若い機動隊員が
「触るなクソ、触るなコラァ、どこつかんどんじゃコラ、ボケェ、土人が!」
と関西訛りで暴言を吐く。当初こそ「立ち去りなさい」と丁寧な言葉を使っていたものの、反対派の抵抗が収まらないと見るや「立ち去れ」「無駄や」と荒っぽい口調になっていった。
一方、反対派は「土人」発言に対し、「おい、ヤクザ!」と反発していた。
沖縄タイムス「琉球処分から受け継がれる差別を露呈」
動画が拡散されると、ツイッターには
「然るべき処罰と再発防止が必要」
「日本人として恥ずかしい」
「公権力を履き違えた言動」
と機動隊員への非難が相次いだ。2つの県紙もこれまでにないほどのトーンで強く反発している。
沖縄タイムスは16年10月18日付けの電子版記事で「琉球処分以来、本土の人間に脈々と受け継がれる沖縄差別が露呈した」「この暴言は歴史の節目として長く記憶に刻まれるだろう」と糾弾、琉球新報も19日付け電子版記事で「罪になるかどうか以前に、発言をした精神構造に問題がある」といった弁護士のコメントを掲載している。
J-CASTニュースは、暴言に対する大阪府警本部の認識を聞いた。担当者は
「一般的に関西人は、地方へ行くと『強くて悪い言葉を吐く』と見られてしまいがちですし、この隊員が差別用語として言ったのか、それとも風体を見て言ったのか、(動画では)この部分だけをピックアップされているのでわかりません。ただ、『土人』が不適切、論外な発言であることは間違いありません」
と語る。
現地へ派遣される機動隊員には、事前に「公正中立、丁寧な対応をするよう指導教養」していたといい、「今後このようなことがないよう指導を徹底したい」と強調した。
暴言を吐いた機動隊員の処分については「府警本部はまだ本人と接触できていないが、今後の調査結果をふまえて検討する」としている。
菅義偉官房長官も19日午後の記者会見でこの暴言に触れ、
「警察からは、本人及び本人の直近の上司に対し口頭で厳重注意を行った、当該隊員に対してはすでに配置換えを行った、という報告も受けている。いずれにしろ、北部訓練所において警備に従事する警察官が不適切な発言を行ったことは大変残念であると思う」
とコメントした。