「面目ない」では済まない日本政府 パリ協定「批准遅れ」で実害も

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   地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が2016年11月4日に発効する。環境を守るという大義名分とは裏腹に、各国の経済的利害に直結するだけに、15年12月の採択から1年足らずのスピード発効は、批准を急いだ米中、後れを取るまいと必死になった欧州連合(EU)などの事情が絡み合った結果だ。世界第5位の排出国である日本はようやく10月11日に批准案を閣議決定し、国会に提出したが、世界の流れを完全に読み誤って後手に回り、発効後の国際的なルールづくりで出遅れることになりそうだ。

   パリ協定は国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択され、締約国が2020年以降の温室効果ガスの自主的な削減目標を示し、世界全体で産業革命前と比べた気温の上昇を2度未満に抑えることが目標。法的拘束力があり、今世紀後半には温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す。

  • 「パリ協定」をめぐる各国の動向とは(写真は2016年8月3日撮影)
    「パリ協定」をめぐる各国の動向とは(写真は2016年8月3日撮影)
  • 「パリ協定」をめぐる各国の動向とは(写真は2016年8月3日撮影)

米中の思惑一致

   協定の発効には批准55か国、批准国の温室効果ガス排出量が世界の55%が必要。発効は2018年ごろとの見方が国際的な常識だったが、16年10月5日時点で74か国が批准、排出量は58.82%に達し、発効要件をクリアした。

   9月3日、温室効果ガス排出量が世界1、2位の中国と米国が同時批准。米国は2017年1月に任期満了するオバマ大統領のレガシー(遺産)づくりだが、共和党のトランプ候補がパリ協定反対を明言していることから、クリントン政権で締結・ブッシュ政権で批准見送りとなった京都議定書の二の舞は避けたいという狙いがある。

   中国は、もともと協定の削減目標が「2030年ごろに排出を頭打ちに」と甘く、痛みが少ない。南シナ海などで対立する米国との、数少ない「協調カード」でもあり、中国との対立を決定的にしたくない米国とも、この部分では思惑が一致した。

   この米中の動きにEUは焦った。加盟28か国の国内手続き完了を待たずに、EUとして一括批准する異例の手に出て、欧州議会が10月4日に批准を承認、これが発効条件クリアの決め手になった。滑り込みセーフの格好だ。

   これに比べ日本政府は、9月下旬になって今臨時国会での批准承認を目指すと決断するという出遅れぶりだが、面目ないだけでなく、「実害」の懸念も指摘される。

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