百貨店や総合スーパーなどの大型店が閉鎖する動きが相次いでいる。セブン&アイ・ホールディングス(HD)が2016年10月初旬、阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングと資本業務提携したのも、百貨店事業の整理が大きな狙いとされている。セブン&アイHDは傘下の総合スーパー(GMS)、イトーヨーカ堂の一部店舗の閉鎖計画も掲げている。大型店不振の原因は何か。
「百貨店市場の縮小は不可避だ」。セブン&アイHDの井阪隆一社長は、H2Oリテイリングとの提携発表会見で、こう述べた。かつて「小売りの王様」と呼ばれてきた百貨店は売り上げ低迷にあえいでいる。国内百貨店の総売上高は6兆1742億円(2015年)と、ピークだった1991年の9兆7130億円から約4割も落ち込んでいる。バブル崩壊による消費低迷や少子化による顧客減に加え、ファーストリテイリング傘下のユニクロに代表されるような新しい衣料品専門店の台頭で、急速に力を失ってきているのが実態だ。
閉店が相次ぐ
こうした中、老舗百貨店グループ、三越伊勢丹ホールディングスがこの9月、三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店(東京都多摩市)の営業を2017年3月で終えると発表した。百貨店の閉鎖はこれに限らず、西武旭川店や八尾店、そごう柏店など、大手だけでも全国で7店が今秋から来夏にかけ、閉店する計画だ。
閉店の波が襲うのは百貨店だけではない。セブン&アイHDは、全国にあるイトーヨーカ堂の40店舗を5年以内に閉鎖する方針を示している。うち20店舗は2017年2月期をめどに閉める計画だ。
百貨店やGMSが苦境に立たされている大きな背景には、節約志向の高まりで売り上げが伸びないことに加え、高齢化の進展があるとされる。流通関係者によれば、高齢者は日常の買い物をするのに、700メートル以上の距離は歩かないというデータもある。若いうちなら、電車に乗ったり、自家用車を運転したりして気軽に遠出し、少しでもよいモノ、安価な品物を求めようと動く。だが、高齢になって足腰が弱くなれば、電車も車の運転も敬遠しがちになる。
コンビニや食品ミニスーパーが伸びるとみる関係者は多い
「郊外の大型店などから高齢者の足が遠のくという現象はすでに顕在化してきており、それがいっそうの売り上げ減につながっている。大型店の将来は見込めず、閉鎖の動きが加速している」と、業界に詳しい流通アナリストは分析する。
一方、最近では高齢者でもインターネットを駆使する人が増えている。遠くの大型店ではなく、ネットによる買い物を選ぶ人が増えていることも、大型店の不振につながっている。
高齢化がいっそう進めば、高齢者が歩いて行けるコンビニエンスストアや食品ミニスーパーが伸びるとみる関係者は多い。百貨店や総合スーパーなどの大型店は抜本的な変革が迫られている。