観客動員数1000万人、興行収入が130億円を突破するなど記録的ヒットを続ける新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」。その主人公の一人、宮水三葉の声を演じた女優の上白石萌音さん(18)が、インスタグラムで三葉と同じ髪型を披露したところ、「便乗するなゴミ 世界観壊れるだろ」「売れて調子に乗ってるな」などといった罵声がネット上にあふれることになった。アニメの登場人物は専業の声優が担当すべきという意識がアニメオタクには強く、俳優やタレントの起用が発表されると決まって激しい批判が出る。
今回もそうした流れの中で起こった事だが、しかし、映画の記録的ヒットに伴い、上白石さんの声優としての評価も高まっており、罵声はほどなくかき消された。
当初は「これだから声優の素人はダメ」
「三葉」のコスプレ写真が見つかったと話題になったのは2016年10月4日。上白石さんは16年8月29日にインスタグラムに2枚の写真をアップしていた。髪型を似せたもので、「三葉より」と書かれたメッセージには舞台で公開記念挨拶をしてきたとの説明が付いていた。また歌手デビューし、16年10月5日発売のCDに映画の主題歌「なんでもないや」のカバー曲が収録されていて、それがユーチューブにアップされているという話題から掲示板では、
「便乗するなゴミ 世界観壊れるだろ 裏方に徹しろや これだから声優の素人はダメ」 「売れて調子に乗ってる」
「三葉たそは10年ぶりに恋した二次キャラだけど 、中身はぶさいな...」
「やっぱり三次は惨事だった」
などと罵声の声が挙がった。
実はこうした批判は映画公開前からあった。それは上白石さんが女優だからで、「俳優やタレントはアニメに擦り寄って来るな!」という強い意識だ。俳優やタレントを起用すれば実力不足でアニメが台無しになる、ということを信じていたり、「君の名は。」に大好きな人気声優も起用されているけれども脇役、ということに腹を立てていたためだ。
インスタグラムの写真が発見されたことで再び荒れるのではないかと思われた。しかしそうはならなかった。「この人の声本当にいいと思うわ」などと主張する大量のアニオタが現れたからだ。掲示板にはこんなことが次々と書き込まれていく。
次第に「若手声優より、俳優とかの方が声優も上手いからな」
「アニオタだけど、その辺のテンプレアイドル声優よりも良いものを持ってると思う」
「萌音がやってる三葉可愛すぎだろ 神木君はさすがだったな 上手いわ」
「神木も上白石も声優上手だった。でも長澤まさみが凄い上手だったのが驚いた」
中には、棒読みしているように聞こえたため上白石さんだと思ったら、アイドル声優だった、と打ち明ける人もいた。
このところアイドル声優は本業のほかにライブや写真集を出すなどタレント活動に忙しく、それだけのせいではないが演技や出す声が画一的になっていて声優としてのレベルの低下が著しいと叩かれている。そうした中で、上白石さんの演技は一瞬で、「声豚」と呼ばれる人たちが愛してきた「アイドル声優」も蹴散らすような評価を得た。
「アニメ声テンプレアニメ演技の若手声優より、俳優とかの方が声優も上手いからな、声の深みが違うわ 。若手声優には欠けてる、心の通った演技なんだろうな」
などといった評価や、上白石さんは東宝芸能所属だから映画会社系のプロダクションがアニメ分野に本格的に進出すべきだ、といった意見も出ている。
アニメ映画の記録を塗り替える勢いの「君の名は。」は、アニオタの声優感まで変えているようだ。