衛生車(バキュームカー)を製造する東邦車輛など4社が共同発表した、バキュームカーから出る糞尿のニオイを「甘い香り」に変えるという新技術が、インターネット上で思わぬ反響を広げている。
朝日新聞ウェブ版が2016年9月29日夜に「不快な臭いをチョコレートのような甘い香りに変える」と報じたところ、ツイッター上で「もうチョコ食えない」「食べ物はやめて」との悲鳴が相次いだのだ。30日には「乗り物ニュース」もネットで「バキュームカーがチョコのにおいに!?」という記事を配信した。これに対し、東邦車輛の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「(香りを表現する際に)チョコレートという食品名を出した事実はない」と困惑する。
一斉に窓を閉めるほどのニオイが「甘い香り」に
東邦車輛と繊維メーカーのシキボウ、香料メーカーの山本香料、凸版印刷の4社は29日、糞尿の悪臭を芳香に変えるバキュームカー専用の潤滑剤「デオマジックVC1オイル」を共同開発したと発表した。
発表によると、糞尿に近いニオイ成分を混ぜて作った「良い香り」の香料をベースに、特殊な香料を調合し、これをバキュームカーのポンプの潤滑油に使うことで、実際の糞便臭が加わると、悪臭が「いい香り」に変化するという仕組みだ。従来の潤滑油を今回の新製品に変えるだけで、不快な糞尿臭が「甘い香り」に変わるという。
東邦車輛の担当者は30日のJ-CASTニュースの取材に対し、「バキュームカーから出る糞便臭は、全ての事業者が何十年と抱えてきた重い課題でした」と語る。その理由については、
「バキュームカーで吸収作業をする際には、糞尿を溜めるタンクの内部を真空に近付けます。そのとき、タンク内のガスを外部に排出するので、必然的に糞尿のニオイが辺りに飛散してしまうのです」
と話す。そのニオイは強烈で、住宅密集地などでは「バキュームカーが来ると、近隣の住民が一斉に窓を閉めるほどです」と説明する。当然ながら、作業員もひどい糞便臭に悩み続けてきたそうだ。
だが、今回の新技術は効果てき面だという。東邦車輛が数十社の衛生業者にモニター調査をしたところ、ほぼ全ての事業者から「不快な糞便臭がいい香りになった」との回答が得られたという。
食い違う両者の言い分
衛生業者にとっては「革新的」なこの新技術が、ネット上では思わぬ方向から注目を集めることになった。「バキュームカーの臭いをチョコの香りに」などという見出しが拡散された結果、ツイッターやネット掲示板に、
「やめて!チョコ食えなくなるじゃん!!チョコの香りがバキュームと同じとか」
「食い物の匂いは止めてくれ 花の香りとかで頼む」
「チョコを食べると思い出すのはイヤ」
といった誤解も含めた悲鳴のような声が相次いで寄せられたのだ。バキュームカーとチョコという組み合わせが強烈な印象を与えたようで、なかには、「チョコ業界への嫌がらせかよ」「チョコ業界からクレーム来そう」などといった声もあった。
今回の発表文には「甘い香り」とはあるが、「チョコレートのような香り」との記述はなく、東邦車輛の担当者も、「具体的な食品名を出した事実はなく、このように報じられて困惑している」と話す。その上で、朝日新聞に対しては、「ネット記事の文面を変えるように申し入れることも含めて、対応を検討している」という。
J-CASTニュースが朝日新聞に対し、「『チョコレートのような』という表現を使った理由」などについて質問したところ、
「『チョコレートのような』という表現は、東邦車輛も含めた4社による合同記者会見の場での主催者側からの発言を引く形で記しました。なお、この記者会見のなかで、香りを食品にたとえるのは避けてほしいというような要請は、特にいただいておりません」
と回答しており、両者の言い分は食い違っている。