東京・新大久保のある「中国人向けネットカフェ」は、雰囲気だけでなくネット利用環境も中国国内並み――
そんな情報をネットで見かけたJ-CASTニュース記者は2016年9月14日、JR新大久保駅近くにある「QQワンバー」(中国語表記は『网〓(口へんに「巴」)』で、『ネットカフェ』の意)という店舗を訪れた。
利用方法の案内は中国語表記だけ
新大久保駅の改札を出て徒歩1分ほど。寂れた外観の雑居ビルの4階に、目指す「中国人向けのネットカフェ」はあった。ビルの入口周辺には資材が無造作に積まれており、一見「従業員用の入口なのでは?」と考えてしまう外観だ。しかしよく見れば、「営業中」と書かれた紙が貼り出されている。
ビルを上って店内に入り、受付の女性従業員に「すみませ~ん」と声をかけると、いきなり「日本人デスカ?」と質問された。店員は戸惑った様子だったので、「日本人でも大丈夫ですか」と尋ねると、
「利用デキマス。デモ日本語ワカル人イナイ」
と、たどたどしい日本語で返答があった。利用方法の案内も中国語表記だけで、日本語の説明文は見当たらなかった。
料金システムは、会員料金で6時間1000円(入会金は不要)。会員にならなくても、身分証を呈示すれば1時間あたり300円で利用できる。座席は空いている場所から好きに選ぶことが可能だが、いずれもオープンスペース。日本のネットカフェでよく見る「個室」はなかった。
記者が入店したのは平日の正午過ぎ。約70席の店内には20人以上の客がおり、いたる所で中国語が飛び交っていた。大きな声で楽しげに談笑しているグループ客の姿も目立ち、タバコを吸いながら店内を歩く人も。なかなか猥雑な雰囲気だ。
店内で注文できる食事メニューは、韓国のインスタントラーメンやレトルトの中華料理など。従業員の身振りを交えたカタコトの説明によれば、近くの中華料理店の店員が配達注文の売り込みにやってくるときもあるそうだ。
「日本人が1人で利用している姿は見たことがなかった」
座席についてパソコンの電源を入れると、中国語版Windowsのデスクトップ画面が表示される。初期状態では日本語での文字入力はできず、中国語かアルファベットの2つしか選択できない。また、インターネットブラウザのホームに設定されているのも、中国最大の検索エンジン「百度」のトップ画面だった。
記者が、思いついたいくつかのサイトに接続したところ、基本的にはどのサイトも問題なく閲覧できた。たとえば「グーグル」は、香港版のグーグルが表示された。
さらに、その仕組みはよく分からないものの、日本からの利用は限定的にしかできない、中国で人気の音楽配信サイト「百度音楽」を開くと、中国曲や日本のポップ曲などを普通に無料で聴くことができた(帰社後に同サイトを見ると、視聴できる動画もあるが、「提供給中国内地的用戸」<漢字表記は日本使用文字>といった表示が出て聴く事ができないコンテンツが多数あった)。
このように、店内のいたる所が「中国仕様」になっていることについて、中国出身で日本に移住して8年目だという利用客の男性(23)はJ-CASTニュースの取材に、
「2~3日に1度くらいの頻度で店を利用していますが、客の9割以上は中国人ですね。とくに、若い留学生が友人グループと利用する姿が目立ちます」
と話す。その上で、「これまでに、日本人が1人で利用している姿は見たことがなかった」とも付け加えていた。男性によれば、こうした中国人向けのネットカフェは大久保・新大久保エリアに少なくとも5軒以上はあるという。
なお、通常は中国国内からしか利用できないネットコンテンツを利用できる点を含め、同店でのネット接続環境についてネットカフェを運営する「LUDIN」(ルーディン)の中国人担当者に取材したが、「こちらではよく分からない」と回答するだけだった。