高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「国の借金」巡るホラー話 財務分析すれば怖くない

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   国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高が2016年6月末時点で1053兆4676億円になった。内訳は国債が918兆4764億円となり、3月から7兆6667億円増えた。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は1兆4697億円減の82兆2792億円。借入金は2兆955億円減の52兆7120億円だった。今年7月1日時点の総務省の人口推計で単純計算すると、国民1人当たり約830万円の借金を抱えていることになる。

   以上は、財務省の発表である。ウソではないが、情報の一部でしかない。これに対して、これを「国の借金」というのはミスリーディングであるという反論もある。要するに、国民の借金であるかのようにいうが、正確には政府の借金であって、国民とは関係ないというものだ。

  • 財務省が発表した「国の借金」1053兆4676億円をどう考えるべきか?
    財務省が発表した「国の借金」1053兆4676億円をどう考えるべきか?
  • 財務省が発表した「国の借金」1053兆4676億円をどう考えるべきか?

バランスシートを見ると

   ただし、この意見はちょっと甘い。確かに政府の借金であるが、政府が破綻すれば、国民への行政サービスが行われなくなり、その損失は結局国民に降ってくる。大きな大企業が倒産したら、その関連先は大きな被害を受けるが、日本政府は日本の中で最大の企業といってもよく、日本政府に無関係な国民はほとんどいない。

   ではどう考えたらいいだろうか。一番心配なのは、日本政府の破綻であるので、そのバランスシートを見てみよう。借金だけをいっても、それに見合う資産があれば破綻しない。これは破綻論の基礎である。なぜか政府の話になると、バランスシートも読めない素人ほど、財務省のいうことを鵜呑みにして、破綻だという。これはかなり滑稽な話である。

   政府のバランスシートは、きちんと財務省のホームページに載っている。政府子会社を含めた連結ベースの政府バランスシートもある。それらを初めて政府内で作ったのは筆者であり、今から20年以上前のことである。しかし、それらは直ぐには公表されずに、正式に公表されたのは2006年からだ。しかも、連結ベースのバランスシートでは、政府子会社となるべき日銀が抜けている。中央銀行である日銀を含めて政府の財務状況を考えるのは、経済学では当たり前のことで、「統合政府」といわれている。

   政府のバランスシートでみて、資産を差し引いたネットの負債残高は500兆円程度である。さらに、統合政府で考えればネット負債残高は150兆円程度である。これらの対GDP比率を見れば、先進国の中でも悪いほうでない。

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