歩きまわっていたかと思うと突然立ち止まり、スマートフォンを凝視しては指をスライドさせている人が、街にあふれている。おそらく、それは夢中になって「ポケモンGO」で遊んでいる人だろう。
2016年7月22日10時すぎ、日本でも配信が始まったスマートフォン向けの無料ゲーム「ポケモンGO」。爆発的な人気で、早く遊びたい人が殺到して、一時ダウンロードできなくなったほどだ。開発を手がけたゲーム大手の任天堂は株価が急騰。さぞ、笑いが止まらないだろうと思われたが...。
わずか半月で世界累計3000万ダウンロード?
もはや、社会現象となっている「ポケモンGO」。配信開始から丸1日が経過した7月23日15時30分時点でも、各種アプリのダウンロード数ランキングで1位を維持している。
フォーブスジャパン(7月11日付)によると、7月6日にリリースされた米国では、その日の夜に米国のiOSとアンドロイド向けのアプリストアで公開された「ポケモンGO」は、わずか5時間でチャートの1位に浮上。「これは今年最大のヒットとされるモバイルゲーム『クラッシュ・ロワイヤル』の3分の1以下の時間だった」と伝えている。その後も勢いは衰えず、ビッグデータ分析のシミラーウェブ(SimilarWeb)のデータによると7月10日時点で「ポケモンGO」のデイリーアクティブユーザー数はツイッターに匹敵する状態となっていたと、その人気ぶりを伝えていた。
日本のスマホ向けゲームアプリでは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)やミクシィ(mixi)の「モンスターストライク」(モンスト)が大人気。「パズドラ」は16年3月30日に世界累計4100万ダウンロードを突破。「モンスト」は4月29日に3500万ダウンロードを突破している。
「ポケモンGO」のダウンロード数は不明だが、日本に先立って配信が始まった米国やオーストラリア、ニュージーランドなどのダウンロード数は、わずか半月ほどで3000万に達したとも報じられている。これに日本でのダウンロード数を加えると、早々に「パズドラ」や「モンスト」を抜く可能性もある。
「たのむ!!!月曜だれか買ってくれ」と阿鼻叫喚
そうしたなか、任天堂は2016年7月22日の東京株式市場が取引を終えたあと、ポケモンGOの配信開始による同社への「連結業績への影響は限定的」だとするコメントを発表した。
その理由については、
「当アプリ(編注:ポケモンGO)は、米Niantic Inc.が開発を行い配信しており、当社(任天堂)の関連会社であるポケモンは、ポケットモンスターの権利保有者としてライセンス料と開発運営協力に伴う対価を受け取ります」
と説明。その上で、任天堂の業績は持分法によるポケモンについて保有する議決権32%に応じる形で反映されるにとどまるため、「影響は限定的」だと説明している。さらに、任天堂はアプリと連動するウェアラブルデバイス「ポケモンGO Plus」を製造、7月末に発売を予定している。この点については、4月27日に公表した連結業績予想に「織り込み済み」で、「直近の状況を鑑みても、現時点では、当業績予想の修正は行いません」とした。
米国などでの配信開始後、「ポケモンGO」の爆発的な人気を受けて任天堂株は急騰。10営業日ほどで約2倍の2万8220円(7月22日終値)まで上昇している。同社としては現時点では影響を「保守的」に見込んでいるといえば、聞こえはいいが、つまり株価急騰の期待感ほど、任天堂は儲かっていなかったということのようだ。
任天堂が「修正しない」と説明している17年3月期通期の連結業績予想(4月27日発表)によると、売上高は5000億円で16年3月期実績より0.9%減、営業利益は36.9%増の450億円とみている。「ポケモンGO」の配信や「ポケモンGO Plus」の発売を加味しても売上高は減少する、というわけだ。
これには、インターネットの投資家サイトも、
「ふぁぁぁぁあw すごいタイミングでぶっ込んできたなwww」
「週末に一睡もできないやつが増えそうだな...」
「これあかんやつじゃねーー?? 期待のポケモンplusも織り込み済み えーーー!!」
「まじ勘弁。これだけヒットしても業績修正なしのレベルって。たのむ!!!月曜だれか買ってくれ」
などと、阿鼻叫喚の状態だ。
「連結業績への影響は限定的」だとする任天堂の発表後に取引が始まった7月22日の米株式市場では、証券会社の店頭などで取引される任天堂の米預託証券(ADR)が終値で前日比10.55%安の29.00ドルと急落した。任天堂への「ポケモンGO」の収益貢献に、不透明感が広がったことが要因とみられる。