参議院選挙が2016年6月22日に公示されてから最初の党首討論が24日、報道番組「NEWS23」(TBS系)で開かれたが、ここでも「政治とカネ」の話を巡りヒートアップする場面があった。
生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎氏が安倍晋三首相に対し、「ガリガリ君」の購入を収支報告書に計上していた、などと突如追及を始めたのだ。安倍首相は「個人攻撃じゃないか」と反論、きまずい空気が流れた。
「セコさでは、安倍総理も舛添さんに負けず劣らず」
党首討論では序盤、アベノミクスへの評価、10%への消費増税再延期といった、参院選の争点を議論した。司会の星浩氏から「発言は私が当てた方1人ずつ、1回1分まで」というルールが伝えられたこともあり、9党首は一定の冷静さを保っていた。
異変が起きたのは後半を少し過ぎた辺り。前東京都知事の舛添要一氏が政治資金の公私混同問題で6月21日に辞職したこともあり、テーマが「政治とカネ」に移った。
星氏に水を向けられた山本氏が、「舛添さんの問題は『非常にセコかった』ということを日本中が共有した問題だったと思うんですね。政治資金が政治活動に関係あるのかということに使われたことに関しても、非常にみなさん怒りを持った」とした後、
「そのセコさ、そのやり方っていう部分に関しては、負けず劣らずといいますか、安倍総理も、たとえば『ガリガリ君』というアイスクリームであったりとか、そういうものにも支出をしている。少額に対する領収書に対して開示をされた内容から分かってきたらしいんですけれども」
と追及を始めた。「どこで支出されたかという情報もここにある」と、手元を指す素振りも見せた。
安倍首相は「私は全然知らないですよ。いきなりこんなところでそんなこと言われても。事実かどうかは調べますけど」と困惑しつつも反論。眉間にしわを寄せる場面もあった。山本氏はなおも続けた。
「おかしいですよ。フェイスブックで秘書がその件に関して『今日は一緒にコンビニに行って、これを買ってもらったんだ』ということに関しても、裏が取れているということで、記事にされている」
安倍首相は「私の支出で買っているんですから、そんなもの政治資金で買いませんよ」と言えば、山本氏は「コンビニの領収書が計上されているんです。政治資金、収支報告書にも載っているということは明らかになっている」と続いた。完全に2人だけのやり取りになる。
「(政党助成金以外の支出も)すべてオープンにしておりますが、私が食べた分を載せるっていうことはあり得ないですよ」と安倍首相。それまで、政治資金規正法の問題など大局的な議論がされていた中で山本氏が追及を始めたためか、
「個人攻撃をいきなりこういう場でするのはちょっと」
と打ち切ろうとしたが、山本氏は止めない。
「個人攻撃ではないですよ、事実をさらしただけですよ」
山本氏は発言を続けたが、星氏が遮るように公明党・山口那津男氏に話を振って一応収まった。
秘書のフェイスブック投稿は確かにあるが...
2人の一連の会話に、ネット上では「首相たじたじ」「ガリガリ君すら自腹を切らないセコイ人間」「もうすこし山本太郎さんのお話しききたかった」と山本氏を讃える声も出たが、「中学生並み」「選挙中の党首討論の場ではなすことじゃないよ」「山本太郎の言ってることはわからんでもないけど、前の話との繋がりがいまいち変な気がする」と批判や呆れる声も出た。
山本氏が問題視していた秘書のフェイスブックとは、安倍首相のアカウントで2012年8月31日に投稿された以下のものだろう。
「兵庫県から戻り、安倍さんはコンビニで大好きなアイスを購入。秘書にも『ガリガリ君』買ってくれました 今日も一日みなさん有難うございました。良い週末をお過ごし下さい 《秘書アップ》」
ただ、この書き込みからは、収支報告書に計上したかどうかは定かでない。
アイス購入「疑惑」については、2015年1月20日付で日刊ゲンダイ(デジタル版)が報じている。同紙が開示請求したところ、「ガリガリ君コーンポタージュ×2」と印字されたコンビニの領収書が出てきたという。安倍氏の資金管理団体「晋和会」の収支報告書(2012年分)に計上する少額領収書として、総務省に提出していたといい、領収書の画像も掲載されている。
なお、「ガリガリ君」は赤城乳業(埼玉県深谷市)が30年以上製造販売している人気アイスキャンディー。2016年4月には、最もポピュラーな「ソーダ味」の価格(税別)を20年ぶりに10円値上げし、70円になったことでも話題を呼んだ。安倍首相が購入した「コーンポタージュ味」は、2012年当時の税込価格で126円。日刊ゲンダイの記事にある領収書では「×2」とあり、購入額は252円となる。
山本氏は出演後の6月25日(24日深夜)に、
「ガリガリ君食べて寝よーっと。 ちなみに自腹ね」
とツイートしている。