中国で9億人超が利用するスマホアプリ「微信(WeChat)」の決済サービス「微信支付(WeChat Pay)」が、本格的に日本に上陸する。中国人の「爆買い」需要を加速する可能性がある。
「WeChat Pay」は中国人旅行者向けのモバイル決済サービスで、中国ではホテルやショッピングモール、スーパーにコンビニエンスストア、飲食店など、すでに30万件もの店舗で利用できるといい、日本でも今後導入する店舗が急増しそうだ。
手数料かからないスマホの決済
中国版「LINE」と呼ばれるコミュニケーションアプリ「WeChat」を展開する、中国最大級のIT企業、テンセントホールディングス(HD)グループが2016年6月6日に東京・丸の内で開いた「日本戦略説明会」には、約250人が参加した。
WeChatは、中国内外の月間アクティブユーザー数で7.6億人(2015年11月、テンセント社調べ)が利用。「WeChat Pay」は、そのサービス機能の一つで、2013年に中国ではじまった。中国ではスマートフォン利用者の9割にインストールされていて、多くの人が利用する、最もポピュラーな決済手段の一つに成長している。
中国のみならず、シンガポールやカナダ、ニュージーランドなどでも利用でき、米ドルや英ポンド、タイ・バーツなどの通貨にも対応している。
ユーザーは自分の銀行口座をWeChat Payに登録するだけで、スマホを使って簡単に資金決済できる。一方、店舗側はiPhoneやiPadなどのタブレット端末(決済用端末)を利用して決済金額を入力。ユーザーが提示した「QRコード」を撮影(読み込む)することで決済できる。WeChat Payの支払いはデビッドカード(即時決済)型なので、登録した銀行口座から引き落とされる仕組みだ。
QRコードを利用した決済方法は日本ではなじみがないが、中国では普及している決済サービス。その決済手段の、日本での利用を拡大することで、訪日中国人旅行者による「インバウンド市場のさらなる拡大に貢献したい」と、テンセントHD執行役員兼経営戦略本部長の江浩然氏は語る。
WeChat payのメリットは、ユーザーにとっては、中国で一般的な決済手段である「銀聯カード」と異なり、手数料がかからないことがある。また、支払いが完了すると、ユーザーのモバイル端末には日本円での支払額と人民元に換算された金額が表示されるため、レシートも不要。支払いから明細まですべてオンラインで確認できるので、利用額の管理がラクにできる。
店舗側のメリットは、クレジットカードのように決済用の端末機を設置する必要がなく、iPhoneやiPadを決済端末として利用できるので手間やコストも抑えられる。また、決済手段が増えることで、中国人旅行者の利用増が見込める。
決済が済んだあとには、ユーザーのアカウント情報を取得できるほか、ユーザーが店舗のアカウントをフォローすれば、利用後にクーポン券やイベントの案内を届けることができる。マーケティングツール、コミュニケーションツールとしても活用できるメリットが見込める。