熊本地震の被災地では連日、各地からボランティアが駆けつけて復旧作業を手助けしている。損壊した家屋の片づけをはじめ、ボランティアの貢献度は高い。
人数を安定的に確保するため、熊本県内の各自治体はインターネットによる広報、募集活動を続けている。当面は多くの人手が必要な状況が続くだけに、新規募集だけでなく、1度来た人に2度、3度と足を運んでもらうアピールをしている。
ゴールデンウィーク明けに急減
熊本県内では2016年4月16日未明の本震以降、各地で余震が続いたため、安全への配慮からボランティアの受け入れはすぐには始まらなかった。熊本市が災害ボランティアセンターを開設したのは、4月22日。市社会福祉協議会が運営するフェイスブックを見ると、初日は1000人超がボランティア活動を希望してセンターに足を運んだ。
このフェイスブックページは震災後、ボランティア募集に関する広報に重要な役割を果たしている。例えばセンター開設直前には、ボランティア初心者のために「食費・宿泊費はボランティアの皆様の自己負担となります」といった基本事項を告知し、開設後はセンターの場所、当日の受付時間、降雨や悪天候時の活動実施の有無、参加人数をこまめに報告してきた。
熊本市でこれほど大規模なボランティア募集は初めてといっていい。そのため運用の変更も生じる。4月23日の投稿を見ると、ボランティアを依頼する被災者らの申し込みを電話とファクスにしていたが「電話がつながりにくい」との問い合わせが多く、電子メールでも受け付けるようにしたと告知している。
センター開設当初数日は、800~1000人がボランティア活動に参加。ゴールデンウィークに入ると、受付者数が1000人を超える日もあり、実際に作業に携わる件数をオーバーして「あぶれる」人も出たほどだ。だが市社会福祉協議会の事務局長を務める中川奈穂子さんによると、連休終盤から人数が減少傾向になり、連休明けに激減したという。
熊本県全体でも同様の傾向が見られた。県社会福祉協議会が日ごとに集計しているボランティア活動参加者数(速報値)によると、5月4日の3582人をピークに、平日だった6日は952人、週末の7、8日は2000人近くまで持ち直したが9日になると841人と急減した。
ネット駆使して「需要と供給」を一致させる
だが熊本市では、「右肩下がり」になる前に歯止めをかけた。これはネットの効果もあった。市社会福祉協議会のフェイスブックでは5月8日夕方、休み明けのボランティア数減少が予想されるとしたうえで、「センターではまだまだ多くのご依頼をいただいており、皆様のお力をお貸しいただきたい状況です」と呼びかけた。この投稿にはシェア数86件と、他の投稿より多くなっている。熊本市の大西一史市長がツイッターで繰り返しボランティアの不足を訴えたのも奏功したようだ。平日でも500~600人、週末には1000人ほどがセンターに受付に来て、スタッフを安心させた。
フェイスブックの活用で、人数の確保には中川さんは手ごたえを感じているようだ。悪天候の日は募集人数を制限するが、事前告知するとセンターまで来る人数が減るので「ずいぶんご覧になっているんだな、と感じます」。それでも、当日センターに来てから作業の割り当てがなく「無駄足」を踏む人はいる。依頼側の急なキャンセルもあり、「需要と供給」をピタリ一致させるのは難しい。だが今は、「被災者を助けたい」と活動を希望する人の「足を止めてはならない」と、とにかく多くの人に来てもらおうとの方針だ。活動に参加できない人が出た場合は中川さん自らわび、理由を丁寧に説明したうえで「ぜひまた助けに来てほしい」と伝えるのだ。
時間の経過とともに、ボランティアの活動内容も変化してきた。被災した家屋の片づけでは、初めは「力仕事」が求められたが、「これからは細やかな作業が出てきます。ぜひ主婦の人、ボランティア未経験の人にも来ていただきたい」と中川さんは呼びかける。被災地では短期間で復旧・復興が完了するわけではなく、息の長い支援が必要だ。 「フェイスブックやネットで発信する際は、協力いただく人に『また来てほしい』とのメッセージを一貫して送り続けています」。
間もなく被災地では梅雨の時期を迎え、気温が上昇して被災者にとっては厳しい気候になる。それだけにボランティアを「イベント」で終わらせず、2度3度と活動に携わるリピーターを増やすことが急務になっている。