社会保障と税の個人番号(マイナンバー)制度がはじまって、まもなく半年が経つなか、富士通や日本ヒューレット・パッカード(HP)などのパソコンメーカーの「修理規定」が、インターネットで注目されている。
パソコンメーカーは、マイナンバーの情報が記憶装置に残っている場合、「修理できない」としている。修理してもらうには、自身の責任でマイナンバーの情報を「消去する」必要があるという。
富士通「修理規定」には「消去していただく」
国が推し進める「マイナンバー制度」は、2016年1月から導入がはじまっている。国民一人ひとりに、それぞれ12ケタの番号を割り振り、国や自治体は社会保障と税、災害対策の3つの分野で番号を活用していく。脱税や年金、給付金の不正受給を防止する狙いがある。
マイナンバーはすでに国民に付与され、アルバイトやパートを含め、ビジネスパーソンは勤務先に番号を知らせているはずだ。たとえば会社員であれば、給与から支払っている所得税や住民税などの税金(1~12月の源泉所得税額の合計)は、1年間の給与額とともに翌年1月末までに、マイナンバーに紐付けされて税務署に報告される見通し。
つまり、マイナンバーは自らと、勤務先などが厳重に管理しているわけ。しかもそれは大企業から個人事業主まで、どの会社でも同じだ。
マイナンバーの情報を、自社のパソコンで管理している会社は少なくない。実は、そういった会社にとって由々しき事態が起っていたことがわかり、ネット上で騒動が広がっている。
2016年5月24日にネットサイトのGigazinが「マイナンバーが記録されているPCの修理はできない」と報じたことが発端だ。
J‐CASTニュースも調べてみると、富士通の「パーソナルコンピュータ修理規定」(第11条 修理ご依頼時の注意事項)には、
「対象機器の記憶装置(ハードディスクなど)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがある場合には、修理をお受けできません」としたうえで、ユーザーには修理を依頼する前に「お客様の責任においてマイナンバー(個人番号)を消去していただく」としている。さらに、修理や診断作業の過程でハードディスクなどにマイナンバーが記憶されたデータが確認された場合には「修理を実施せずに、お預かりした対象機器をお客様に返却いたします」
とある。
この修理規定に基づくと、マイナンバーの情報が記憶装置に残っているパソコンが故障して操作できなくなった場合の修理は、実質的にできないということだ。
こうした条項は、ヒューレットパッカード、エプソンなどのメーカーの修理規定にもあり、広がっている可能性がある。
「確認書」を書かされることも・・・
こうした情報に、インターネットには、
「不便になっててワロタ」
「正しい対応なのはわかってるけど、なんだか面倒くせぇなあ~」
「消せばいいのかもしれないけど。なんだかやり過ぎのような気がする」
「マイナンバーが保存されていないことの確認書みたいなやつ、書かされることある」
と、「行き過ぎ」の声や「仕方ない」の声が交錯する。
さらには、
「結局、こんな制度つくるから迷惑を被る。なんの役にも立たんし、責任押し付けてメリット少ないなんざぁ愚の骨頂だ」
「マイナンバー制度がはじまったらカード1枚で便利になるとか、言ってたよな。官僚はこの状況を説明してほしいわ」
と、マイナンバー制度そのものへの批判の声もある。
とはいえ、マイナンバー情報が流出すると、事業者や個人(公務員を除く)が対象になる罰則は、軽くても「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」、重い場合には「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科せられる。
12ケタの番号は原則として生涯変更できないため、情報が流出してしまうとやり直しが利かないことがある。
修理規定について、富士通は「マイナンバー法には『番号を不正に取得してはならない』とあり、(修理規定は)当社のスタンスを示したものです」と話す。
基本的に、ユーザーから故障したパソコンが送られてくると、「マイナンバーに限らず、データが残っていれば起動を確認した際にわかります。その際にデータの消し忘れがあれば、ユーザーに消去してよいか、承諾を得るために直接お電話して確認しています。また、起動しない場合はハードディスクを交換する必要がありますから、そのときは通常のリサイクルプロセスと同じようにデータを消します。いずれにしても、データの内容については確認のしようがないんです」と説明。「パソコンを故障したまま戻すようなことは、電話での確認時にユーザーからの申告がない限り、ありません」と言い切る。
実際にマイナンバーが導入されたこの約半年に、故障したパソコンを修理せずに戻した実績は「ない」という。