ストーカー規制法の「死角」 メールはアウト、でもSNS書き込みは...

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   アイドル活動をしていた冨田真由さん(20)の刺傷事件で、容疑者の男(27)は、ツイッターやブログで執拗に冨田さんへの嫌がらせを続けていた。しかし、現状では、それだけで「ストーカー」とはみなせないというのだ。

   冨田さんの首など20か所以上も刺したという男は、報道によると、警視庁の調べに「殺すつもりだった」と供述したという。警視庁では2016年5月23日、殺人未遂などの疑いに切り替えて東京地検に男を送検し、犯行までの経緯を調べている。

  • 容疑者は駅前から後をつけていたが…
    容疑者は駅前から後をつけていたが…
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4か月で400件もツイート

   報道や男のSNS書き込みから、事件の全容が次第に分かってきた。

   きっかけは、男が1月17日のライブで冨田さんに贈り物をしたことかららしい。

   男はライブ終了後に会場出入り口付近で腕時計などを渡し、「どこに住んでるの?」などと冨田さんのプライベートまで聞いてきた。男のツイッターでも最初は、「真由ちゃんと飲み交わしたい」などと穏やかだったが、次第に表現がエスカレートした。

   冨田さんから返信がないことにいら立ち、2月1日には、「『腕時計』捨てたり売ったりするくらいなら返して」などと呼びかける。さらには、「もっと見下しばかにしてみろよ」と罵倒するようになり、4月19日のブログでは「死ねよ」と何度も繰り返し書き込んだ。

   冨田さんは、気味が悪くなって腕時計などを返送したが、直後の4月28日には、男は、「ほんと嫌な女」などと抗議のツイートをした。この日は、「そのうち死ぬから安心してね」と何かを示唆するようなことも漏らしている。

   男は翌日のブログで、冨田さんからツイッターをブロックされたことも明かしていた。この1~4月の間に、男は冨田さんのことで400件ほどもツイートしている。

警察庁の検討会が2年前に「SNSも規制すべきだ」

   これに対し、冨田真由さんの母親は5月4日、男の在住地に当たる京都府警に「娘が嫌がらせを受けている」と電話で相談した。府警は、冨田さんの在住地の警視庁に相談するよう言い、今度は冨田さんが9日、武蔵野署に相談に出向いた。

   男のツイートなどを示し、「書き込みを止めさせてほしい」などと訴えた。事件前日の20日も、武蔵野署にライブ出演のことで電話したが、何かあったら連絡するよう言われただけだったという。

   武蔵野署では、直ちに危害を加えるものではないと判断して、警視庁のストーカー担当部署に伝えず、SNSに書き込んだのが本人か調査が必要だとして、男に話も聞かなかった。

   男は事件当日、JR武蔵小金井駅前で冨田さんを待ち伏せて声をかけたが無視され、冨田さんの後をつけて歩いた後に犯行に及んだという。この日も、朝から「人を何らかの行動に駆り立てるのはたいていの場合、意欲などではなく羞恥だ」などとブログに意味深な書き込みを続けていた。

   男のSNS書き込みだけを見ても、冨田さんに危害が加えられる可能性は十分に考えられる。警視庁では、武蔵野署などの対応が適切だったか内部調査していると報じられているが、現行のストーカー規制法では、SNS書き込みだけで規制はできないようだ。

   電話やメールは対象になっているが、SNSは対象外だからだ。

   実は、警察庁の有識者検討会が14年8月、SNSによるストーカー行為は増加が見込まれるとして、「速やかに法律による規制対象とするべき」と報告書で提言していた。それにもかかわらず、法改正は実現しておらず、識者らからは、早急な対応を求める声が出ている。

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